入門テキスト「測度と積分」
本稿においては、解析学の基礎概念である測度空間とその上の積分についての基礎理論をテキスト形式で展開する。本稿を読むにあたっては、実数の定義、基礎的な集合論の取り扱い、位相空間の言葉に慣れ親しんでいることが好ましい。本稿の構成は以下のように9章に分かれている。1章から5章までは測度と積分に関する基礎的一般論をテンポよく展開する。5章における $L^p$ 空間の完備性と双対性により、測度と積分が関数解析学と繋がる。5章以降は、入門テキスト「位相線形空間」と並行して読むようにできている。 6章の数え上げ測度と $\ell^p$ 空間は、主にHilbert空間のCONSについて述べるために書いたもので、7章以降を読むために特に必要ではない。7章では多くの具体的な幾何学的測度の抽象化であるRadon測度の基本的性質について述べる。8章では7章の内容を応用してLebesgue測度の基本的性質について述べる。9章では関数解析学の技術的なところでしばしば現れるBanach空間値関数の積分、Bochner積分について述べる。
この章では、測度と積分の基礎用語である可測空間と可測写像について述べる。
この章では、可測空間上の測度の定義と、測度による積分の定義について述べる。
この章では、積分の基本定理であるLebesgue優収束定理、Tonelli-Fubiniの定理について述べる。
この章では、複素数値測度とRadon-Nikodymの定理について述べる。
この章では、$L^p$ 空間の完備性と双対性について述べる。$L^p$ 空間は解析学における様々な関数空間の土台となる最も基本的な関数空間の一つであり、その完備性と双対性は、関数空間上の無限次元解析学を実現する上で極めて重要である。
この章では、数え上げ測度と $\ell^p$ 空間について述べ、その応用としてHilbert空間のCONSと、Banach空間、Hilbert空間の直和について論じる。
この章では、局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度とRiesz-Markov-角谷の表現定理について述べる。 Radon測度は局所コンパクトHausdorff空間の位相構造と密接に関連した測度であり、Lebesgue測度に代表される局所コンパクト群上のHaar測度、Riemann多様体上のRiemann測度などを含む多くの具体的な測度がRadon測度である。Riesz-Markov-角谷の表現定理は、連続関数空間上の線形汎関数とRadon測度の一対一対応を、積分を通して与える非常に応用の効く定理である。
この章では、Lebesgue測度の定義と基本的性質について述べ、最終的に積分を運用していく上で重要な変数変換公式について述べる。
この章では、関数解析学の技術的なところでしばしば現れるBanach空間値関数の積分、Bochner積分について述べる。
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参考文献
- Walter Rudin「Real And Complex Analysis」
- Walter Rudin「Functional Analysis」
- 日合 、柳 「ヒルベルト空間と線型作用素」
- 吉田 伸生「ルベーグ積分入門」
- 柴田 良弘「ルベーグ積分論」
- Dana P. Williams「Crossed Products of C*- Algebras」