部分集合族、べき集合
部分集合族、べき集合
部分集合族はある集合の部分集合を元に持つ集合である。部分集合族は数学の議論をする上で基本的な概念である。たとえば位相空間では位相の定義をする段階で必要となる。
定義
$S$ を集合とする。
- 「$S$ の部分集合全体の集合」を $S$ のべき集合といい、 $2^S$ や $\mathcal{P}(S)$ などと書く。$S$ のべき集合には空集合と $S$ 自身を元に持つ。つまり、$\emptyset , S \in 2^S$。
- $S$ のべき集合 $2^S$ の部分集合 $\{ A_i \} _{i \in I}$ ($I$ は添え字集合)を $S$ の部分集合族という。このとき当然、任意の $i \in I$ に対して $A_i \subset S$ である。
(注意)「部分集合系」という言葉と「部分集合族」という言葉を使い分ける流儀もある(例えば、松坂和夫「集合・位相入門」 p18、p44)。その際は上記の「べき集合 $2^S$ の部分集合」を「部分集合系」といい、写像 $A:I \longrightarrow 2^S$ ($A(i)$ を $A_i$ と書く)の像 $A(I)$ を $(A_i)_{i \in I}$ と書いてこれを「部分集合族」という。「集合論の初歩」のシリーズではこれらを区別しない流儀をとる。~
(補足)$X$、$Y$ を集合とする。$y=(y_1,y_2, \ldots ,y_n) \in Y^n$ に対して、写像 $y: \{ 1,2,\ldots , n \} \ni i \longmapsto y_i \in Y$ を与える対応は $Y^n$ から $ \textrm{Map}(\{ 1,2,\ldots , n \},Y)$ への $1$ 対 $1$ の対応である(つまり全単射である)。この意味で $Y^n = \textrm{Map}(\{ 1,2,\ldots , n \},Y)$ と思うことができる。この考え方を一般化して $Y^X := \textrm{Map}(X,Y)$ としばしば定義される。今、$Y= \{ 1,2 \}$ とし、写像 $f:X \longrightarrow \{ 1,2 \}$ に対して $\phi (f) := \{ x \in X | f(x)=1 \}$ を与える写像 $\phi$ は $\{ 1,2 \} ^X$ から $X$ のべき集合への全単射となる。この対応によって $\{ 1,2 \} ^X$ と $X$ のべき集合は同一視され、$2^X$ という記号のもととなっている。
具体例
- $S= \emptyset$ とすると、$2^S = \{ \emptyset \}$ である。これは空集合を元に持つ集合であって、空集合ではないことに注意せよ。$\{ \emptyset \} \ne \emptyset$。
- $S = \{ a,b,c \}$ ($3$ 点集合)とすると $2^S = \{ \emptyset ,\{ a \},\{ b \},\{ c \},\{ a,b \},\{ a,c \},\{ b,c \},\{ a,b,c \} \}$ となり、これは $8$ 個の元からなる集合である。
- 一般に $S = \{ a_1, a_2 , \ldots ,a_n \}$ ($n$ 点集合)とすると、$2^S$ は $2^n$ 個の元からなる集合である。実際、$S$ の部分集合としてあり得る場合の数を考えると、$a_1$ を元に持つかどうかで $2$ 通り、$a_2$ を元に持つかどうかで $2$ 通り、$\ldots$、$a_n$ を元に持つかどうかで $2$ 通りある。よって全部で$2 \times 2 \times \ldots \times 2 (n $ 回 $) =2^n$ 通りとなる。
集合論の初歩
論理と命題 / 集合の基本的な用語、集合の演算 / 全称記号と存在記号 / 写像、像、逆像、写像のグラフ / 写像の合成、写像の拡大と制限 / 選択公理について / 単射、全射、全単射、逆写像 / 部分集合族、べき集合 / ( 演算と代数構造 ) / ( 関係、同値関係、商集合 ) / ( 初歩的な順序集合 ) / ( Zornの補題 ) / ( 集合の濃度 )