可縮空間
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可縮空間
可縮空間 (かしゅくくうかん、contractible space) とはホモトピー論的にある意味で最も単純であるような位相空間である。例えばパラコンパクトハウスドルフな可縮空間の上の任意のファイバー束、ベクトル束は自明になる。これは底空間が単純なために「ねじれることができない」とも解釈することができる。
定義
位相空間 $X$ が可縮であるとは 一点からなる位相空間とホモトピー同値であることを言う。圏論的に言えばホモトピーの圏における終対象とも言うことができる。 また次のような同値な条件が存在する。
- (1) $X$ 上の恒等写像と $X$ 上のある定値写像の間にホモトピーが存在する
- (2) $X$ は一点からなる部分空間を変形レトラクトとして持つ
- (3) 任意の位相空間 $Y$ に対して $[Y,X]$ は一点からなる
(3)より空集合は可縮でないことが直ちにわかる。 ここで、(2) の「変形レトラクト」を「強変形レトラクト」に変えたものを可縮性の定義とする流儀も存在するが、それは上の条件とは同値ではないので注意が必要である。
例
- 1点からなる空間は可縮。
- 全てのベクトル空間は可縮。これは原点への(強)変形レトラクトを $H(x,t)\colon=(1-t)x$ と定めれば良い。
- より一般に凸集合は可縮。
- 部屋が二つある家は直感的に反して可縮である例として有名である。
- ダンスハットは可縮だが縮約可能でない例として有名である。
- 有限次元の球面は全て可縮でないが、対して無限次元ではそうではない。例えば無限次元Hirbert空間のノルムによる単位球面や、有限次元球面の自然な埋め込み $S^n\to S^{n+1}$ による帰納極限を取った空間(終位相、CW複体の弱位相を入れる) 無限次元球面 $S^{\infty}$は可縮である。無限次元球面の可縮性は有限巡回群の分類空間構成する時に役立つ。
位相的性質
遺伝性
- 可縮性は部分空間に遺伝しない。
- 部分空間の可縮性は全空間の可縮性を誘導しない。
- 可縮な部分空間同士の和集合は一般に可縮でない。
- 可縮な部分空間同士の共通部分は可縮とは限らない。
- 可縮空間の連続写像による像は再び可縮である。
- 可縮空間の連続写像による逆像は可縮とは限らない。
- 2つの可縮空間の直和は必ず可縮でない。(2点空間とホモトピー同値)
- 2つの可縮空間の直積は再び可縮である。
他の位相的性質との関連
局所可縮空間
任意の点 $x \in X$ に対して可縮な基本近傍系を持つとき、すなわち $x$ の任意の開近傍 $x\in U$ に対してそれより小さい可縮な開近傍 $x\in V \subset U$ が取れるとき $X$ は局所可縮であると言う。一般に可縮性と局所可縮性に包含はない。代表的な例を以下に挙げる
また全ての CW複体 は局所可縮であり(しかしながら可縮とは限らない。例えば $S^1$ が反例である。)、したがってくし空間はCW複体とはなり得ないことがわかる。
位相的性質(局所版)
遺伝性(局所版)
- 局所可縮性は部分空間に遺伝しない。
- 部分空間の局所可縮性は全空間の局所可縮性を誘導しない。
- 局所可縮な部分空間同士の和集合は局所可縮とは限らない。
- 局所可縮な部分空間同士の共通部分は局所可縮とは限らない。
- 局所可縮空間の連続写像による像は局所可縮とは限らない。
- 局所可縮空間の連続写像による逆像は局所可縮とは限らない。
- 2つの局所可縮空間の直和は再び局所可縮である。
- 2つの局所可縮空間の直積は再び局所可縮である。
他の位相的性質との関連(局所版)
- 局所可縮 $\Longrightarrow$ 局所弧状連結 $\Longrightarrow$ 局所連結
- 局所可縮 $\Longrightarrow$ 局所単連結 $\Longrightarrow$ 半局所単連結
- 局所可縮 $\Longrightarrow$ 局所$n$-連結 $\Longrightarrow$ 半局所n-連結