レンズ空間
レンズ空間
レンズ空間(lens space) とは、基本的な $3$ 次元閉多様体の一つであり、ある種のホモトピー不変量が完全でない例として度々挙げられる。またはその一般化を含めてレンズ空間と呼ぶこともある。
定義
- ($3$ 次元)レンズ空間
まず $(p,q)$ を互いに素な自然数の組($p\geq2,1\leq q<p$)とし、$3$ 次元球面 $S^3$を $S^3\colon=\left\{(z_{1},z_{2})\in{\mathbb{C}}^2 \ \middle| \ |z_{1}|^2+|z_{2}|^{2}=1\right\}$ と ${\mathbb{C}}^2$ の部分空間と見なしておく。すると次のように $S^3$ に $\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ を作用 させることができる。
\begin{eqnarray} \large S^{3}\hspace{1mm}\times\hspace{1mm}(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})\hspace{4mm}&\to& \hspace{16mm}S^{3} \\ \large ((z_{1},z_{2}),m+p\mathbb{Z})\hspace{2mm}&\mapsto& (z_{1} e^{\frac{2m\pi}{p}\sqrt{-1}},z_{2} e^{\frac{2qm\pi}{p}\sqrt{-1}}) \end{eqnarray}
この作用による商空間を ${\rm L}(p;q):=S^{3}/(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})$ を$(p;q)$ レンズ空間と呼ぶ。 またその他の記号として ${\rm L}(p,q)$ や、その一般化との整合性のため ${\rm L}(p;1,q)$、${\rm L}_{p}(1,q)$ などと書かれることもある。
- 高次元レンズ空間
同様の方法でより高次元の球に $\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ を作用をさせることができる。 まず $(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_n)$ を自然数の組であって、$p\geq 2$、どの $i$ についても $p$ と $1\leq q_{i}<p$ は互いに素であるとする。$(2n-1)$ 次元球面($n>2$)も同様に、$\displaystyle S^{2n-1}\colon=\left\{(z_{1},z_{2},\cdots,z_{n})\in{\mathbb{C}}^n \ \middle| \ \sum_{j=1}^{n}|z_{j}|^2=1\right\}$ として ${\mathbb{C}}^n$ の部分空間と見なしておく。すると同様に次のように $\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ を作用させることができる。
\begin{eqnarray} \large S^{2n-1}\hspace{3mm}\times\hspace{2mm}(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})\hspace{5mm}&\to& \hspace{30mm}S^{2n-1} \\ \large ((z_{1},z_{2},\cdots,z_{n}),m+p\mathbb{Z})\hspace{2mm}&\mapsto& (z_{1} e^{\frac{2q_{1}m\pi}{p}\sqrt{-1}},z_{2} e^{\frac{2q_{2}m\pi}{p}\sqrt{-1}},\cdots,z_{n} e^{\frac{2q_{n}m\pi}{p}\sqrt{-1}}) \end{eqnarray}
この作用による商空間を ${\rm L}(p;q_{1},q_{2,}\cdots,q_{n}):=S^{2n-1}/(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})$ を$(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n})$ レンズ空間と呼ぶ。また他の記号として ${\rm L}_{p}(q_{1},q_{1},\cdots,q_{n})$ も使われることがある。
- コメント:個人的に特にレンズっぽさは感じられないですね
定義から直ちに従うこと
- いずれの場合も作用は標準的球面距離に関して等長かつ解析的(または滑らか)な自由な固有不連続作用となっており、自然な商写像 $\pi\colon S^{2n-1}\to {\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n})$ は $S^{2n-1}$ の単連結性から $p$ 次の普遍被覆写像であり、特に主$\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$束となっている。この解析的(またはなめらか)な作用により ${\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n})$ は解析的(またはなめらかな) 向きづけ可能 $(2n-1)$ 次元閉多様体になり球面距離から自然に距離、リーマン計量が誘導される。
- $\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ の自己同型写像を合成してから作用させても得られる空間は同じものであることがわかる。これは「 $p$ と互いに素な自然数 $r$ に対して、 ${\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n})={\rm L}(p;rq_{1},rq_{2},\cdots,rq_{n})$ と同一のものが得られる」という形で定式化される。また特に $n=2$ の時 ${\rm L}(p;q_{1},q_{n})$ を考えると、$q_{1}+p\mathbb{Z}$ は $p$ と $q_{1}$ が互いに素であるから $\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ において乗法逆元を持つことに注意する。つまり、ある自然数 $r$ が存在し $rq_{1}\equiv 1 (\rm{mod} \ p)$ となるものが存在する。従って ${\rm L}(p;q_{1},q_{2})={\rm L}(p;rq_{1},rq_{2})={\rm L}(p;1,rq_{2})={\rm L}(p;rq_{2})$ と $3$ 次元の時の定義で十分であることがわかる。
- 成分を入れ替えを考えることで微分同相なものが得られる。これは「置換 $\sigma \in \mathfrak{S}_n$ に対して ${\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n})$ と ${\rm L}(p;q_{\sigma(1)},q_{\sigma(2)},\cdots,q_{\sigma(n)})$ は $[(z_{1},z_{2},\cdots,z_{n})]\mapsto [(z_{\sigma(1)},z_{\sigma(2)},\cdots,z_{\sigma(n)})]$ によって自然に微分同相となる」という形で定式化される。$n=2$ の時、特に上の結果と合わせることで ${\rm L}(p;q)={\rm L}(p;1,q)={\rm L}(p;q^{-1},1)\cong {\rm L}(p;1,q^{-1})={\rm L}(p;q^{-1})$ を得る(ただし $q^{-1}$ は ${\rm mod} \ p$ における $q$ の乗法逆元である。)。
- $p=2$ の時、 ${\rm L}(2;1,1,\cdots,1)$ は実射影空間 $\mathbb{R}P^{2n-1}$ となる。
主な不変量の値
自然な商写像 $\pi\colon S^{2n-1}\to {\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n})$ は普遍被覆であるからこの被覆変換群が基本群となり特に $\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ と同型となる。特に $q_{i}$ によらず $\pi_1({\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n}),[(z_{1},z_{2},\cdots,z_{n})])\cong \mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ であり、その生成元は \begin{eqnarray} \large [0,1]&\to& \hspace{15mm}{\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n}) \\ t\hspace{3.5mm} &\mapsto& [(z_{1} e^{\frac{2q_{1}t\pi}{p}\sqrt{-1}},z_{2} e^{\frac{2q_{2}t\pi}{p}\sqrt{-1}},\cdots,z_{n} e^{\frac{2q_{n}t\pi}{p}\sqrt{-1}})] \end{eqnarray} が表すループが代表元となる。
弧状連結であるから $\pi_{0}({\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n}))$ は一点集合である。 $i>1$ に対してはくファイバー束のホモトピー完全系列の特殊な場合として適用することで $\pi_{i}(S^{2n-1})\cong\pi_{i}(\rm{L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n}))$ であることがわかり本質的に球面のホモトピー群を求めることに帰着する。詳しくはそちらも参照されたい。
整数係数のホモロジー群は $S^{2n-1}$ の CW複体の構造であって群作用で保たれるものを具体的に構成することによって計算することができる。もしくは $3$ 次元レンズ空間に対しては後述するDehn手術、種数 $1$ のHeegaard分解とMayer–Vietoris完全系列よっても計算できる。 \begin{eqnarray} &H_{0}({\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n}))&\cong& \ \ \mathbb{Z} \\ &H_{1}({\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n}))&\cong& \mathbb{Z}/p\mathbb{Z}\\ &H_{2}({\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n}))&\cong& \ \{0\} \\ &\hspace{10mm}\vdots& {} \\ &H_{2n-3}({\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n}))&\cong& \mathbb{Z}/p\mathbb{Z}\\ &H_{2n-2}({\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n}))&\cong& \ \{0\} \\ &H_{2n-1}({\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n}))&\cong& \ \ \mathbb{Z}\\ &H_{i}({\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n}))&\cong& \ \{0\} \ (i\geq 2n)\\ \end{eqnarray} ($0<i<2n-1$については $\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ と $\{0\}$ が交互に現れる。)
整数係数コホモロジー群はPoincaré双対性によって $H^{j}({\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n}))\cong H_{(2n-1)-j}({\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n}))$ で計算でき次のようになる。 \begin{eqnarray} &H^{0}({\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n}))&\cong& \ \ \mathbb{Z} \\ &H^{1}({\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n}))&\cong& \ \{0\} \\ &H^{2}({\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n}))&\cong& \mathbb{Z}/p\mathbb{Z}\\ &\hspace{10mm}\vdots& {} \\ &H^{2n-1}({\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n}))&\cong& \ \{0\} \\ &H^{2n-2}({\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n}))&\cong& \mathbb{Z}/p\mathbb{Z}\\ &H^{2n-1}({\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n}))&\cong& \ \ \mathbb{Z}\\ &H^{i}({\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n}))&\cong& \ \{0\} \ (i\geq 2n)\\ \end{eqnarray} ($0<i<2n-1$については $\{0\}$ と $\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ が交互に現れる。)
ホモトピー不変量とレンズ空間の分類
上のようにレンズ空間の代表的なホモトピー不変量は $p$ によって決まり $q_{1},q_{2},\cdots,q_{n}$ によらない。異なる $q_i$ に対してホモトピー同値でないようなものが存在すればそれらは上のような不変量で見分けられないことがわかる。そして実際にそのようなものが存在する(後述)。(Whiteheadの定理も参照されたい。)またレンズ空間についてはさまざまな分類が既になされている。
- ホモトピー同値 [P. Olum]
「${\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n})$ と ${\rm L}(p;q'_{1},q'_{2},\cdots,q'_{n})$ がホモトピー同値」 $\Longleftrightarrow$ 「ある自然数 $k$ が存在して$\displaystyle \prod_{i=1}^{n}q_{i}\equiv \pm\prod_{i=1}^{n}kq'_{i}\ \ ({\rm mod}\ p)$」
- 同相 [E. J. Brody]
「${\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n})$ と ${\rm L}(p;q'_{1},q'_{2},\cdots,q'_{n})$ が同相」 $\Longleftrightarrow$ 「ある自然数 $k$ と置換 $\sigma \in \mathfrak{S}_n$ が存在して、任意の $i$ に対して $q_{i}\equiv \pm kq'_{\sigma(i)}\ \ ({\rm mod}\ p)$」 ($\pm$ は $i$ に依存してよい。)
- 微分同相 (十分条件)
「${\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n})$ と ${\rm L}(p;q'_{1},q'_{2},\cdots,q'_{n})$ が微分同相」 $\Longleftarrow$ 「ある自然数 $k$ と置換 $\sigma \in \mathfrak{S}_n$ が存在して、任意の $i$ に対して $q_{i}\equiv kq'_{\sigma(i)}\ \ ({\rm mod}\ p)$」
- PL同相 [W. Franz, G. de Rham]
「${\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n})$ と ${\rm L}(p;q'_{1},q'_{2},\cdots,q'_{n})$ がPL同相」$\Longleftrightarrow$ 「${\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n})$ と ${\rm L}(p';q'_{1},q'_{2},\cdots,q'_{n})$ が同相」
- H-コボルダント [M. F. Atiyah, R. Bott]
「${\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n})$ と ${\rm L}(p;q'_{1},q'_{2},\cdots,q'_{n})$ がH-コボルダント」$\Longleftrightarrow$ 「${\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{n})$ と ${\rm L}(p';q'_{1},q'_{2},\cdots,q'_{n})$ が同相」
またこれらを $3$ 次元の時にまとめると次のようになる。($3$ 次元多様体においては同相、微分同相、PL同相は互いに同値であることに注意されたい。)
- ホモトピー同値
「${\rm L}(p;q)$ と ${\rm L}(p';q')$ がホモトピー同値」 $\Longleftrightarrow$ 「ある自然数 $k$ が存在して$ q\equiv \pm k^2q'\ \ ({\rm mod}\ p)$」 $\Longleftrightarrow$ 「ある自然数 $k$ が存在して$ qq'\equiv \pm (kq')^2\ \ ({\rm mod}\ p)$」 $\Longleftrightarrow$ 「ある自然数 $k'$ が存在して$ qq'\equiv \pm {k'}^2\ \ ({\rm mod}\ p)$」
- 同相、微分同相、PL同相、H-コボルダント
「${\rm L}(p;q)$ と $\rm{L}(p';q')$ が同相、微分同相、PL同相」 $\Longleftrightarrow$ 「ある自然数 $k$ が存在して、 $(1\equiv\pm k1\land q\equiv\pm kq')\lor (1\equiv\pm kq'\land q\equiv\pm k1) \ \ ({\rm mod}\ p)$」 $\Longleftrightarrow$ 「$(q\equiv\pm q')\lor(1\equiv\pm qq')\ \ ({\rm mod}\ p)$」$\Longleftrightarrow$ 「$(q\equiv\pm {q'}^{\pm 1})\ \ ({\rm mod}\ p)$ 」 (全て $\pm$ は独立)
上記のホモトピー不変量とこれらの分類により、
- ${\rm L}(2;1)$ と ${\rm L}(3;1)$ は基本群、ホモトピー群、(コ)ホモロジー群が異なりホモトピー同値でない。
- ${\rm L}(5;1)$ と ${\rm L}(5;2)$ は基本群、ホモトピー群、(コ)ホモロジー群が一致するが、ホモトピー同値ではない。
- ${\rm L}(7;1)$ と ${\rm L}(7;2)$ はホモトピー同値だが、同相、微分同相、PL同相、H-コボルダントでない。
- ${\rm L}(7;2)$ と ${\rm L}(7;3)$ は同相、微分同相、PL同相、H-コボルダント。
であることがわかる。
$3$ 次元レンズ空間とDehn手術、種数 $1$ のHeegaard分解
${\rm L}(p;q)$ は二つのソリッドトーラスを境界で張り合わせることができる。具体的には二つのソリッドトーラスの一方に標準的なロンジチュード、もう一方のソリッドトーラス上に傾き $\pm \frac{p}{q}$ で得られる閉曲線を設定しておく。この二つの直線を張り合わせるように境界を張り合わせると ${\rm L}(p;q)$ が得られる。これは逆に以下えれば $\rm{L}(p;q)$ の種数 $1$ のHeegard分解を与えている。これは同様にDehn手術によって言い換えることができる。$S^3$ 内の自明な結び目に沿った係数 $\pm \frac{p}{q}$ によるDehn手術によって ${\rm L}(p;q)$ が得られる。また $\pm \frac{p}{q}$ の連分数展開とスラムダンク操作を繰り返すことによって自明な結び目からなる鎖状の絡み目に沿った整数手術に書き換えることができる。具体的には $\frac{p}{q}$ の連分数展開を $[a_{0};a_1,a_{2},\cdots,a_{N}]$ とすると、自明な結び目からなる鎖状の $N+1$ 成分絡み目に端から順に係数 $a_{0},a_{1},\cdots,a_{N}$ としたものに書き換えることができる。(図を入れる。)
Eilenberg–MacLane空間としての無限次元レンズ空間
以下で定義される無限次元レンズ空間は離散群 $\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ の分類空間、つまり $K(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z},1)$ Eilenberg–MacLane空間になっている。主に二つの構成方法がある。 $\{q_{i}\}_{i\in\mathbb{N}}$ を $p$ と互いに素な数の列($1\leq q_{i}<p$)としておく(ここで、数列の取り方は任意である)。
- ここで $k<l$ に対して自然な包含写像 ${\rm L}(p,q_{1},q_{2},\cdots,q_{k})\hookrightarrow {\rm L}(p,q_{1},q_{2},\cdots,q_{l})$ が定まる。この帰納系によって無限次元レンズ空間 ${\rm L}(p;\{q_{i}\}_{i\in\mathbb{N}})\colon=\underset{\underset{i\in\mathbb{N}}{\longrightarrow}}{\lim}{\rm L}(p;q_{1},q_{2},\cdots,q_{i})$が定義され、同様に商写像について帰納極限を取ることで $\pi\colon\underset{\underset{i\in\mathbb{N}}{\longrightarrow}}{\lim}S^{2i-1}=\colon S^{\infty}\to {\rm L}(p,\{q_{i}\}_{\{i\in\mathbb{N}\}})$ が定まりこの写像が $\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ の分類空間を与えている。
- 複素数からなる数列 $\{z_{i}\}_{i\in \mathbb{N}}$ であって有限個を除いた成分が全て $0$ であるようなもの全体のベクトル空間(このベクトル空間には $\displaystyle \|\{z_{i}\}_{i\in\mathbb{N}}\|\colon=\sqrt{\left(\sum_{i=1}^{\infty}|z_{i}|^{2}\right)}$ で定まるノルムによって位相を定めておく)を考えこの空間の単位球面、つまり $\displaystyle \sum_{i=1}^{\infty}{|z_{i}|}^2=1$ 全体を $S^{\infty}$ で表すことにする。ここで $S^{\infty}$ に $\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ を各成分ごとに $\large (\{z_{i}\}_{\{i\in\mathbb{N}\}},m+p\mathbb{Z})\mapsto \{z_{i}e^{\frac{2q_{i}m\pi}{p}\sqrt{-1}}\}_{\{i\in\mathbb{N}\}}$ として作用を入れる。これによる商空間および商写像を考えることができ、$\pi\colon S^{\infty} \to S^{\infty}/(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})=\colon {\rm L}(p;\{q_{i}\}_{i\in\mathbb{N}})$ が定まる。この写像が $\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ の分類空間を与えている。
以上の構成において効いている性質は「無限次元球面は可縮である」ということである。またEilenberg–MacLane空間および分類空間のホモトピー一意性から、どのような数列をとってから構成しても互いにホモトピー同値となる。特に $\rm{L}(p;\{1\}_{i\in\mathbb{N}})$ を考えれば十分であり、このホモトピー同値の違いを除いて $p$ に対する無限次元レンズ空間を ${\rm L}_{p}^{\infty}$ などで表すことがある。 また $p=2$ の時、${\rm L}_{2}^{\infty}$ は無限次元実射影空間 $\mathbb{R}P^{\infty}$ となる。
関連項目
参考文献
- Paul Olum, Mappings of Manifolds and the Notion of Degree, Ann. of Math(2), Vol. 58, No. 3 (Nov., 1953), 458-480
- E. J. Brod, The Topological Classification of the Lens Spaces, Ann. of Math(2) Vol. 71, No. 1 (Jan., 1960), 163-184
- Franz, W., Über die Torsion einer Überdeckung Journ. f. Math. 173, 245-254 (1935).
- G. de Rham, Sur les nouveaux invariants topologiques de M. Reidemeister, Rec. Math. (Mat. Sbornik) N.S., 1936, Vol. 1(43), No. 5, 737–743
- M. F. Atiyah, R. Bott, A Lefschetz Fixed Point Formula for Elliptic Complexes: II. Applications, Ann. of Math(2), Vol. 88, No. 3 (Nov., 1968), 451-491