位相線形空間3:Hahn-Banachの定理とKrein-Milmanの端点定理

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この章では、Hahn-Banachの拡張定理とHahn-Banachの分離定理、Krein-Milmanの端点定理について述べる。$\mathbb{F}$ により $\mathbb{R}$ か $\mathbb{C}$ を表すこととする。また $\mathbb{N}=\{1,2,3,\ldots\}$ とする。

入門テキスト「位相線形空間」

11. Hahn-Banachの拡張定理

定義11.1(Minkowski汎関数)

$X$ を $\mathbb{F}$ 上の線形空間とする。$m\colon X\rightarrow \mathbb{R}$ が次を満たすとき $m$ を $X$ 上のMinkowski汎関数と言う。

  • $(1)$ 任意の $x,y\in X$ に対し $m(x+y)\leq m(x)+m(y)$.
  • $(2)$ 任意の $x\in X$ と任意の $\alpha\in [0,\infty)$ に対し $m(\alpha x)=\alpha m(x)$.

定理11.2(Hahn-Banachの拡張定理1)

$X$ を $\mathbb{R}$ 上の線形空間、$m\colon X\rightarrow\mathbb{R}$ をMinkowski汎関数、$M\subset X$ を部分空間とし、$M$ 上の線形汎関数 $\varphi$ が $\varphi(x)\leq m(x)$ $(\forall x\in M)$ を満たすとする。このとき $X$ 上の線形汎関数 $\widetilde{\varphi}$ で、$\widetilde{\varphi}|_M=\varphi$ かつ $\widetilde{\varphi}(x)\leq m(x)$ $(\forall x\in X)$ を満たすものが存在する。

Proof.

$$ \Lambda\colon=\{(N,\psi):N\text{ は} M\text{ を含む} X\text{ の部分空間、}\psi\text{ は }N\text{ 上の線形汎関数で }\psi|_M=\varphi,\psi(x)\leq m(x)\text{ }(\forall x\in N) \} $$ ($(M,\varphi)\in \Lambda$ であるから $\Lambda$ は空ではない)とおき $\Lambda$ に次のように順序 $\leq$ を定義する。 $$ (N_1,\psi_1)\leq (N_2,\psi_2)\quad\Leftrightarrow\quad N_1\subset N_2,\text{ }\psi_2|_{N_1}=\psi_1. $$ このとき $(\Lambda,\leq)$ は帰納的順序集合である。実際、$\{(N_j,\psi_j)\}_{j\in J}\subset \Lambda$ が全順序部分集合ならば全順序性より $N=\bigcup_{j\in J}N_j$ は $X$ の部分空間であり $\psi|_{N_j}=\psi_j$ $(\forall j\in J)$ なる $N$ 上の線形汎関数 $\psi$ が定義できる。このとき $(N,\psi)$ は $\{(N_j,\psi_j)\}_{j\in J}$ の上界である。よってZornの補題より $(\Lambda,\leq)$ は極大元を持つ。それを $(N,\psi)$ とおく。 $N=X$ であることを示せば証明は終わる。そこで $x_0\in X\backslash N$ が存在すると仮定して矛盾を導く。任意の $s\in \mathbb{R}$ に対し、 $$ \psi_s\colon N\oplus \mathbb{R}x_0\ni x+\alpha x_0\mapsto \psi(x)+\alpha s\in \mathbb{R} $$ として $N\oplus\mathbb{R}x_0$ 上の線形汎関数 $\psi_s$ を定義すると、$\psi_s$ は $\psi$ の拡張である。 $$ \psi_{s_0}(x+\alpha x_0)\leq m(x+\alpha x_0)\quad(\forall x\in N,\forall \alpha\in\mathbb{R})\quad\quad(*) $$ を満たす $s_0\in \mathbb{R}$ の存在を示せば $(N\oplus \mathbb{R}x_0,\psi_{s_0})>(N,\psi)$ となるので $(N,\psi)$ の極大性との矛盾が言える。Minkowski汎関数の定義の $(1)$ の性質より、任意の $x,y\in N$ に対し、 $$ (m(x+x_0)-\psi(x))-(\psi(y)-m(y-x_0))\geq m(x+y)-\psi(x+y)\geq0 $$ が成り立つので、 $$ \inf_{x\in N}(m(x+x_0)-\psi(x))\geq s_0\geq \sup_{y\in N}(\psi(y)-m(y-x_0)) $$ なる $s_0\in \mathbb{R}$ が存在する。このとき、 $$ \psi(x)\pm s_0\leq m(x\pm x_0)\quad(\forall x\in N) $$ であるから、Minkowski汎関数の定義の $(2)$ の性質より、 $$ \psi(x)+\alpha s_0\leq m(x+\alpha x_0)\quad(\forall x\in N,\forall \alpha\in \mathbb{R}) $$ が成り立つ。よって $s_0$ は $(*)$ を満たす。

定理11.3(Hahn-Banachの拡張定理2)

$X$ を $\mathbb{F}$ 上の線形空間、$p\colon X\rightarrow[0,\infty)$ をセミノルム、$M\subset X$ を部分空間とし、$M$ 上の線形汎関数 $\varphi$ が $\lvert \varphi(x)\rvert\leq p(x)$ $(\forall x\in M)$ を満たすとする。このとき $X$ 上の線形汎関数 $\widetilde{\varphi}$ で、$\widetilde{\varphi}|_M=\varphi$ かつ $\lvert\widetilde{\varphi}(x)\rvert\leq p(x)$ $(\forall x\in X)$ を満たすものが存在する。

Proof.

$\mathbb{F}=\mathbb{R}$ の場合は定理11.2より直ちに分かる。$\mathbb{F}=\mathbb{C}$ とする。$X,M$ を自然に $\mathbb{R}$ 上の線形空間とみなしたものを $X_{\mathbb{R}}, M_{\mathbb{R}}$ とおく。 $$ M_{\mathbb{R}}\ni x\mapsto \text{Re}(\varphi(x))\in \mathbb{R} $$ は $M_{\mathbb{R}}$ 上の線形汎関数であり、$\lvert \text{Re}(\varphi(x))\rvert\leq p(x)$ $(\forall x\in M_{\mathbb{R}})$ であるから、$X_{\mathbb{R}}$ 上の線形汎関数 $\psi$ で、 $$ \psi(x)=\text{Re}(\varphi(x))\quad(\forall x\in M),\quad \lvert \psi(x)\rvert\leq p(x)\quad(\forall x\in X) $$ なるものが取れる。$\widetilde{\varphi}:X\rightarrow\mathbb{C}$ を、 $$ \widetilde{\varphi}(x)\colon=\psi(x)-i\psi(ix)\quad(\forall x\in X) $$ と定義すると、$\widetilde{\varphi}$ は $\mathbb{C}$ 上の線形汎関数であり、任意の $x\in M$ に対し、 $$ \widetilde{\varphi}(x)=\text{Re}(\varphi(x))-i\text{Re}(\varphi(ix))=\varphi(x) $$ である。そして任意の $x\in X$ に対し $\alpha\in \mathbb{C}$ で $\lvert \widetilde{\varphi}(x)\rvert=\alpha\widetilde{\varphi}(x)$、$\lvert\alpha\rvert=1$ なるものを取れば、 $$ \lvert \widetilde{\varphi}(x)\rvert=\text{Re}(\widetilde{\varphi}(\alpha x))=\psi(\alpha x)\leq p(\alpha x)=p(x) $$ である。よって $\mathbb{F}=\mathbb{C}$ の場合も成り立つ。

定理11.4(Hahn-Banachの拡張定理3)

$X$ を $\mathbb{F}$ 上のノルム空間、$M\subset X$ を部分空間、$\varphi\in M^*$ とする。このとき $\widetilde{\varphi}\in X^*$ で、$\widetilde{\varphi}|_M=\varphi$、$\lVert \widetilde{\varphi}\rVert=\lVert \varphi\rVert$ を満たすものが存在する。

Proof.

$X$ 上のセミノルム $X\ni x\mapsto \lVert \varphi\rVert\lVert x\rVert\in[0,\infty)$ に対し、定理11.3を適用すれば、$X$ 上の線形汎関数 $\widetilde{\varphi}$ で、 $$ \widetilde{\varphi}|_M=\varphi,\quad \lvert\widetilde{\varphi}(x)\rvert\leq \lVert\varphi\rVert\lVert x\rVert \quad(\forall x\in X) $$ を満たすものが取れる。上式の右の式より $\widetilde{\varphi}\in X^*$、$\lVert\widetilde{\varphi}\rVert\leq \lVert \varphi\rVert$ であり、左の式より $\lVert \varphi\rVert\leq \lVert \widetilde{\varphi}\rVert$ である。

定理11.5(Hahn-Banachの拡張定理4)

$X$ を $\mathbb{F}$ 上のノルム空間、$x_0\in X\backslash\{0\}$ とする。このとき $\varphi\in X^*$ で、 $$ \varphi(x_0)=\lVert x_0\rVert,\quad \lVert \varphi\rVert=1 $$ なるものが存在する。

Proof.

部分空間 $\mathbb{F}x_0$ 上のノルムが $1$ の有界線形汎関数 $\mathbb{F}x_0\ni \alpha x_0\mapsto \alpha\lVert x_0\rVert\in\mathbb{F}$ に対し定理11.4を適用すればよい。

12. ノルム空間の第二双対空間への埋め込み、ノルム空間の弱位相

定義12.1(ノルム空間の第二双対空間への埋め込み)

$X$ を $\mathbb{F}$ 上のノルム空間とする。任意の $x\in X$ に対し $\iota(x)\in X^{**}$ を、 $$ \iota(x)\colon X^*\ni \varphi\mapsto \varphi(x)\in \mathbb{F} $$ と定義する。このとき線形写像 $$ \iota\colon X\ni x\mapsto \iota(x)\in X^{**} $$ は定理11.5よりノルムを保存する。$\iota:X\rightarrow X^{**}$ を $X$ の第二双対空間への埋め込みと言う。

定義12.2(ノルム空間の弱位相)

$X$ を $\mathbb{F}$ 上のノルム空間とする。定理11.4より $X^*$ は $X$ 上の線形汎関数の分離族である。$X^*$ が誘導する $X$ 上の汎弱位相を $X$ の弱位相と言う。

注意12.3(弱位相に関する収束の特徴付け)

命題9.3より $X$ のネット $(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ と $x\in X$ に対し、 $$ \text{弱位相に関して }x_{\lambda}\rightarrow x\quad\Leftrightarrow\quad\text{任意の }\varphi\in X^*\text{ に対して }\varphi(x_{\lambda})\rightarrow\varphi(x) $$ である。

注意12.4(ノルム空間 $X$ の弱位相に関して連続な線形汎関数全体は $X^*$)

命題9.5より弱位相に関して連続な $X$ 上の線形汎関数全体は $X^*$ に一致する。


13. Hahn-Banachの分離定理

補題13.1

$X$ を $\mathbb{F}$ 上の位相線形空間、$C\subset X$ を $0\in X$ の凸開近傍とし、$m\colon X\rightarrow [0,\infty)$ を、 $$ m(x)\colon=\inf\left\{\lambda\in (0,\infty):\frac{1}{\lambda}x\in C\right\}\quad(\forall x\in X) $$ と定義する。このとき $m$ はMinkowski汎関数であり、 $$ C=\{x\in X:m(x)<1\} $$ が成り立つ。

Proof.

明らかに $m(0)=0$ であり、任意の $x\in X$ と任意の $\alpha\in (0,\infty)$ に対し、 $$ \alpha m(x)=\inf\left\{\alpha\lambda\in(0,\infty):\frac{1}{\alpha\lambda}\alpha x\in C\right\}=\inf\left\{\lambda\in(0,\infty):\frac{1}{\lambda}\alpha x\in C\right\}=m(\alpha x) $$ である。また任意の $x,y\in X$ と $\frac{1}{\lambda}x, \frac{1}{\mu}x\in C$ なる任意の $\lambda,\mu\in(0,\infty)$ に対し、 $C$ が凸集合であることから、 $$ \frac{1}{\lambda+\mu}(x+y)=\frac{\lambda}{\lambda+\mu}\frac{1}{\lambda}x+\frac{\mu}{\lambda+\mu}\frac{1}{\mu} y\in C $$ である。よって $m(x+y)\leq \lambda+\mu$ であり、$\lambda,\mu$ の任意性より、$m(x+y)\leq m(x)+m(y)$ が成り立つ。ゆえに $m$ はMinkowski汎関数である。任意の $x\in C$ に対し、$C$ が開集合であることとスカラー倍の連続性より $\lambda\in(0,1)$ で $\frac{1}{\lambda} x\in C$ なるものが取れる。よって $m(x)<1$ である。また $m(x)<1$ ならば、下限の定義より $\frac{1}{\lambda}x\in C$ なる $\lambda\in(0,1)$ が取れ、$C$ は $0$ を含む凸集合なので、 $$ x=\lambda\frac{1}{\lambda}x+(1-\lambda)0\in C $$ である。よって $C=\{x\in X:m(x)<1\}$ が成り立つ。

定理13.2(Hahn-Banachの分離定理)

$X$ を $\mathbb{F}$ 上の位相線形空間、$A,B\subset X$ を凸集合とし、$A$ は開集合で、$A\cap B=\emptyset$ とする。このとき $X$ 上の連続線形汎関数 $\varphi$ と $t\in \mathbb{R}$ で、 $$ \text{Re}(\varphi(x))<t\leq \text{Re}(\varphi(y))\quad(\forall x\in A, \forall y\in B) $$ を満たすものが存在する。

Proof.

  • $(1)$ $\mathbb{F}=\mathbb{R}$ の場合。任意の $x_0\in A$ と $y_0\in B$ を取り、$z_0:=y_0-x_0$ とおく。

$$ C:=A-B+z_0=\bigcup_{y\in B}(A-y+z_0) $$ は $0$ の凸開近傍であるから、補題13.1よりMinkowski汎関数 $m:X\rightarrow[0,\infty)$ で、 $$ C=\{x\in X:m(x)<1\} $$ なるものが取れる。$z_0\notin C$ より $1\leq m(z_0)$ であるから、線形汎関数 $\varphi_0:\mathbb{R}z_0\ni \alpha z_0\mapsto \alpha\in \mathbb{R}$ に対し、$\varphi_0(\alpha z_0)=\alpha\leq m(\alpha z_0)$ $(\forall \alpha\in \mathbb{R})$ である。よってHahn-Banachの拡張定理1より、$X$ 上の線形汎関数 $\varphi$ で、 $$ \varphi(\alpha z_0)=\alpha\quad(\forall \alpha\in\mathbb{R}),\quad\varphi(x)\leq m(x)\quad(\forall x\in X) $$ なるものが取れる。$\varphi$ が連続であることを示す。$0\in X$ において連続であることを示せば十分である。任意の $\epsilon\in (0,\infty)$ に対し $(\epsilon C)\cap (-\epsilon C)$ は $0$ の開近傍であり、 $$ \pm\frac{1}{\epsilon}\varphi(x)=\varphi\left(\pm\frac{1}{\epsilon}x\right)\leq m\left(\pm\frac{1}{\epsilon} x\right)<1\quad(\forall x\in (\epsilon C)\cap (-\epsilon C)) $$ であるから、 $$ \lvert\varphi(x)\rvert<\epsilon\quad(\forall x\in (\epsilon C)\cap (-\epsilon C)) $$ である。よって $\varphi$ は連続である。任意の $x\in A$ と任意の $y\in B$ に対し、 $$ \varphi(x)-\varphi(y)+1=\varphi(x-y+z_0)\leq m(x-y+z_0)<1 $$ であるから、 $$ \varphi(x)<\varphi(y)\quad(\forall x\in A,\forall y\in B) $$ が成り立つ。$t\colon=\sup(\varphi(A))$ とおけば、 $$ \varphi(x)\leq t\leq \varphi(y)\quad(\forall x\in A, \forall y\in B) $$ である。後は $t\notin \varphi(A)$ を示せばよい。$t=\varphi(x)$ なる $x\in A$ が存在すると仮定して矛盾を導く。$\varphi\neq0$ より $\varphi(w)>0$ なる $w\in X$ が取れる。$A$ は $x$ の開近傍なので十分小さい $\delta\in (0,\infty)$ を取れば $x+\delta w\in A$ となる。よって $t<t+\delta\varphi(w)=\varphi(x+\delta w)\in\varphi(A)$ となり、$t=\sup(\varphi(A))$ に矛盾する。

  • $(2)$ $\mathbb{F}=\mathbb{C}$ の場合。$X$ を自然に $\mathbb{R}$ 上の位相線形空間とみなしたものを $X_{\mathbb{R}}$ とおく。このとき $(1)$ より連続線形汎関数 $\psi:X_{\mathbb{R}}\rightarrow\mathbb{R}$ と $t\in \mathbb{R}$ で、

$$ \psi(x)<t\leq\psi(y)\quad(\forall x\in A,\forall y\in B) $$ なるものが取れる。$\varphi:X\rightarrow\mathbb{C}$ を、 $$ \varphi(x)\colon=\psi(x)-i\psi(ix)\quad(\forall x\in X) $$ とおけば $\varphi$ は $X$ 上の連続線形汎関数であり、 $$ \text{Re}(\varphi(x))<t\leq\text{Re}(\varphi(y))\quad(\forall x\in A,\forall y\in B) $$ である。

系13.3 

$\mathbb{F}$ 上の線形空間 $X$ が $2$ つのセミノルム位相 $\mathcal{O}_1,\mathcal{O}_2$ を持つとし、$\mathcal{O}_1$ に関して連続な線形汎関数全体が $\mathcal{O}_2$ に関して連続な線形汎関数全体と一致するとする。このとき $X$ の凸集合 $C$ について、$C$ が $\mathcal{O}_1$ に関して閉であることと $\mathcal{O}_2$ に関して閉であることは同値である。

Proof.

$C$ が $\mathcal{O}_1$ に関して閉であるとして $\mathcal{O}_2$ に関しても閉であることを示せばよい。任意の $x_0\in X\backslash C$ に対し 命題8.6の $(3)$ より $\mathcal{O}_1$ に関する $x_0$ の凸開近傍で $C$ と交わらないものが取れる。よってHahn-Banachの分離定理より $\mathcal{O}_1$ に関して連続な線形汎関数 $\varphi$ と $t\in \mathbb{R}$ で、 $$ \text{Re}(\varphi(x_0))<t\leq \text{Re}(\varphi(x))\quad(\forall x\in C) $$ なるものが取れる。$\varphi$ は $\mathcal{O}_2$ に関しても連続であるので、 $$ V\colon=\{x\in X:\text{Re}(\varphi(x))<t\}\in \mathcal{O}_2 $$ であり、 $$ x_0\in V\subset X\backslash C $$ である。よって $x_0$ は $\mathcal{O}_2$ に関して $X\backslash C$ の内点である。$x_0$ は $X\backslash C$ の任意の点であるので、$X\backslash C\in \mathcal{O}_2$ である。ゆえに $C$ は $\mathcal{O}_2$ に関して閉集合である。

系13.4(ノルム空間の凸集合についてノルム閉であることと弱閉であることは同値)

$X$ を $\mathbb{F}$ 上のノルム空間とし、$C\subset X$ を凸集合とする。このとき $C$ がノルム位相で閉であることと弱位相で閉であることは同値である。

Proof.

注意12.4で述べたように $X$ の弱位相に関して連続な線形汎関数全体は $X^*$ と一致する。よって系13.3より成り立つ。

14. Krein-Milmanの端点定理

定義14.1(凸集合のフェイスと端点)

$X$ を $\mathbb{F}$ 上の線形空間、$C\subset X$ を凸集合とする。$F\subset C$ が次を満たすとき $F$ を $C$ のフェイスと言う。

  • $(1)$ $F$ は凸集合。
  • $(2)$ $\{(x,y)\in C\times C: \exists t\in (0,1)\text{ s.t. }(1-t)x+ty\in F\}\subset F\times F$.

$x\in C$ に対し $\{x\}$ が $C$ のフェイスであるとき $x$ を $C$ の端点(extreme point)と言う。 $C$ の端点全体を $\text{ext}(C)$ と表す。

定義14.2(凸包)

$X$ を $\mathbb{F}$ 上の線形空間とする。$E\subset X$ に対し、 $$ \text{conv}(E)\colon=\left\{\sum_{j=1}^{n}t_jx_j:n\in\mathbb{N},\text{ }t_1,\ldots,t_n\geq0,\text{ }\sum_{j=1}^{n}t_j=1,\text{ }x_1,\ldots,x_n\in E\right\} $$ は $E$ を含む最小の凸集合である。これを $E$ の凸包と言う。

定理14.3(Krein-Milmanの端点定理)

$X$ を $\mathbb{F}$ 上のセミノルム空間、$C\subset X$ を空でないコンパクトな凸集合とする。このとき $\text{ext}(C)\neq\emptyset$ であり、 $$ C=\overline{\text{conv}(\text{ext}(C))}\quad\quad(*) $$ が成り立つ。

Proof.

  • $(1)$ $\text{ext}(C)\neq\emptyset$ を示す。$\mathcal{F}$ を $C$ の空でないコンパクトなフェイス全体に集合の逆包含関係による順序を入れた順序集合とする($C\in \mathcal{F}$ であるから $\mathcal{F}$ は空ではない)。このとき $\mathcal{F}$ は帰納的順序集合である。実際、$\{F_j\}_{j\in J}\subset \mathcal{F}$ を全順序部分集合とすると、全順序性とコンパクト性より $\bigcap_{j\in J}F_j\neq\emptyset$ であり、$\bigcap_{j\in J}F_j$ は $C$ のコンパクトなフェイスである。よってZornの補題より $C$ の空でないコンパクトなフェイスの中で(集合の包含関係による順序に関して)極小なものが存在する。それを $F$ とする。$F$ が一点集合であることを示せばよい。そこで互いに異なる $x_1,x_2\in F$ が存在すると仮定して矛盾を導く。命題8.6の $(3)$ より $x_1$ の凸開近傍で $x_2$ を含まないものが取れる。よってHahn-Banachの分離定理より $X$ 上の連続線形汎関数 $\varphi$ で、

$$ \text{Re}(\varphi(x_1))<\text{Re}(\varphi(x_2))\quad\quad(**) $$ なるものが取れる。$F$ はコンパクトで $\varphi$ は連続なので、 $$ s\colon=\text{min}\{\text{Re}(\varphi(x)):x\in F\} $$ が存在する。そこで空でないコンパクト集合 $$ F_0\colon=\{x\in F:\text{Re}(\varphi(x))=s\} $$ を考えれば、これは明らかに $F$ のフェイスである。したがって $F_0$ は $C$ のフェイスでもある。よって $F$ の極小性より $F=F_0$ であるが、これは $(**)$ に矛盾する。

  • $(2)$ $(*)$ を示す。$\overline{\text{conv}(\text{ext}(C))}\subset C$ は自明である。逆の包含関係を示すため $x_0\in C\backslash \overline{\text{conv}(\text{ext}(C))}$ が存在すると仮定して矛盾を導く。命題8.6より $x_0$ の凸開近傍で $\overline{\text{conv}(\text{ext}(C))}$ と交わらないものが取れる。よってHahn-Banachの分離定理より $X$ 上の連続線形汎関数 $\varphi$ で、

$$ \text{Re}(\varphi(x_0))<\text{Re}(\varphi(x))\quad(\forall x\in \overline{\text{conv}(\text{ext}(C))})\quad\quad(***) $$ なるものが取れる。$C$ はコンパクトで $\varphi$ は連続であるので、 $$ s\colon=\text{min}\{\text{Re}(\varphi(x)):x\in C\} $$ が存在する。そこで空でないコンパクト集合 $$ F\colon=\{x\in C:\text{Re}(\varphi(x))=s\} $$ を考えれば、これは $C$ のフェイスである。よって $\text{ext}(F)\subset \text{ext}(C)$ である。$F$ は空でないコンパクトな凸集合であるので $(1)$ より $\text{ext}(F)\neq\emptyset$ である。そこで $x_1\in \text{ext}(F)$ を取れば、$\text{Re}(\varphi(x_1))=s$、$x_1\in \text{ext}(C)$ である。また $x_0\in C$ より $s\leq \text{Re}(\varphi(x_0))$ である。よって $(***)$ より、 $$ s\leq\text{Re}(\varphi(x_0))<\text{Re}(\varphi(x_1))=s $$ となり矛盾を得る。

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関連項目