曲線の長さとHopf-Rinowの定理
曲線の長さとHopf-Rinowの定理
ここでは曲線の長さとそれに関する重要な性質と空間の分類を紹介し、リーマン多様体において特に重要なHopf-Rinowの定理の距離空間版を証明する1。
3.1. 曲線の長さと弧長距離
定義3.1.1(曲線)
この記事では実直線の区間から距離空間へのLipschitz写像をLipschitz曲線または単に曲線(curve)と呼ぶ((これは本質的に(有界区間毎に)求長可能な曲線(rectifiable curve)と同値である))。
特に有界閉区間 $[s,t]$ 上で変数付けられた曲線 $\gamma\colon [s,t]\to X$ を $\gamma(s)$ と $\gamma(t)$ を結ぶ道(path)(もしくは単に曲線)という。
定義3.1.2(曲線の長さ)
距離空間 $(X,d)$ 上の曲線 $\gamma\colon I\to X$(ただし $I$ は実直線上の区間)にたいし $l(\gamma)$ を
$$l(\gamma):=\sup\{\sum_{i=0}^{n-1}d(\gamma(t_i),\gamma(t_{i+1}))|n\in\mathbb{N}, t_0,t_n\in I, t_0<t_1<\cdots<t_{n-1}<t_n\}$$
と定義する。 $l(\gamma)$ を $\gamma$ の長さ(length)という。有界区間上で変数付けられたLipschitz曲線の長さは必ず有限値を取る。$x$ と $y$ を結ぶ道 $\gamma$ については $d(x,y)\le l(\gamma)$ となる。
定義3.1.3(弧長で変数付けられた曲線)
距離空間 $(X,d)$ 上の曲線 $\gamma\colon I\to X$ が、 $${\small\,任意の\,} s,t\in I(s<t){\small \,にたいし、}l(\gamma_{|[s,t]})=t-s$$ を満たすとき、$\gamma$ は弧長で変数付けされてる(arc length parametrized)という。
命題3.1.4(弧長による再変数付け)
$\gamma\colon I\to X$ を距離空間 $(X,d)$ 上のLipschitz曲線とする。このときある実直線上の区間から区間へのLipschitz写像 $\alpha\colon I\to J$ と弧長で変数付けられたLipschitz曲線 $\tilde{\gamma}$ が存在して $$\gamma=\tilde{\gamma}\circ\alpha$$ を満たす。
このような $\tilde{\gamma}$ を $\gamma$ を弧長で再変数付けした曲線(arc length reparametrized curve)という。
定義3.1.5(弧長距離と弧長距離空間)
距離空間 $(X,d)$ にたいし $\overline{d}\colon X\times X\to \mathbb{R}$ を $$\overline{d}(x,y):=\inf\{l(\gamma)|\gamma{\small\,は\,}x{\small\,と\,}y{\small\,をむすぶ道\,}\}$$ と定義し、 $(X,d)$ のから定まる弧長距離(length metric)(または内的距離(inner metric))という((任意の二点がLipschitz曲線で結べるとき弧長距離は狭義の距離となる。))。一般に $d(x,y)\le\overline{d}(x,y)$ が成立する。弧長距離が元の距離と一致する(狭義の)距離空間を弧長距離空間(length metric space)または内的距離空間(inner metric space)という。
例3.1.6(球面距離)
n次元球面 $\mathbb{S}^n$ はn+1次元ユークリッド空間 $\mathbb{E}^{n+1}$ の部分空間とみなせるが、その距離(球面距離)はユークリッド距離の制限自体ではなくその内的距離に一致する。
定義3.1.7(近似的な中点を持つ空間)
距離空間 $(X,d)$ が $${\small\,任意の\,}x,y\in X{\small\,と、任意の実数\,}\epsilon>0{\small\,にたいし、ある\,}m\in X {\small\,が存在して\,}d(x,m),d(m,y)<\frac{1}{2}\cdot d(x,y)+\epsilon$$ を満たすとき $X$ は近似的な中点を持つ(has approximate midpoint)という。
命題3.1.8(弧長距離空間と近似的な中点)
弧長距離空間は近似的な中点を持つ。逆に完備な距離空間が近似的な中点を持てば弧長距離空間である。
補題3.1.9(近似的な分点の存在)
$(X,d)$ を弧長距離空間とする。このとき、任意の $x,y\in X$ と $s+t>d(x,y)$ を満たす実数 $s,t>0$ にたいして、ある $m\in X$ が存在し $d(x,m)<s$ かつ $d(m,y)<t$ となる。
補題3.1.10
$X$ を弧長距離空間とする。このとき任意の $x\in X$ と $r,s>0$ にたいして $B(B(x,r),s)=B(x,r+s)$ が成り立つ。
3.2. 測地線と測地空間
定義3.2.1(測地線)
距離空間 $(X,d)$ 上の曲線 $\gamma\colon I\to X$ が任意の $r,s,t\in I(r<s<t)$ にたいして、 $$d(\gamma(r),\gamma(t))=d(\gamma(r),\gamma(s))+d(\gamma(s),\gamma(t))$$ を満たすとき測地的だ(geodesic)といい、測地的な曲線を測地線(geodesic curveもしくは単にgeodesic)であるという。
同様に、任意の $s\in I$ にたいしある $\epsilon>0$ が素材して、任意の $t_0,t_1\in I(0< t_0,t_1<\epsilon)$ について $$d(\gamma(s-t_0),\gamma(s+t_1))=d(\gamma(s-t_0),\gamma(s))+d(\gamma(s),\gamma(s+t_1))$$ を満たすとき局所測地的だ(locally geodesic)といい、局所測地的な曲線を局所測地線(locally geodesic curveもしくは単にlocally geodesic)であるという((分野によってはこれを単に測地線という))。
弧長で変数付けられた測地線について定義域が閉区間、無限半開区間、実数全体となるものをそれぞれ、測地線分(geodesic segment)又は測地路(geodesic path)((分野によってはこれを最短測地線分(minimizing geodesic segment)といい、測地線分を局所測地線分の意味で使う))、測地半直線(geodesic ray)、測地直線(geodesic line)という。
命題3.2.2(測地線の弧長による同値条件)
距離空間 $(X,d)$ 上の曲線 $\gamma\colon I\to X$ について以下は同値。
- $(0)$ $\gamma$ は測地線.
- $(1)$ 任意の $s,t\in I(s<t)$ にたいして、$l(\gamma_{|[s,t]})=d(\gamma(s),\gamma(t))$.
定義3.2.3(測地空間)
任意の二点を結ぶ測地線が存在する距離空間を測地距離空間(geodesic metric space)もしくは単に測地空間(geodesic space)という。
任意の二点を結ぶ測地線がただ一つ存在する距離空間を一意測地空間(uniquely geodesic space)という。
任意の距離が $r$ 未満の二点を結ぶ測地線が存在する距離空間を $r$ 測地空間($r$-geodesic space)という。同様に $r$ 一意測地空間($r$-uniquely geodesic space)も定義される。
例3.2.4
- ユークリッド空間は一意測地空間で有り、任意の二点を通る測地直線が存在する。
- (弧長距離による)直径 $\pi r$ の球面は $\pi r$一意測地かつ測地な距離空間であり、任意の二点を通る局所測地直線が存在する。
- 双曲空間(Poincaréモデルなど)は一意的測地空間で有り、任意の二点を通る測地直線がただ一つ存在する。
- より一般に完備(で連結)なリーマン多様体は測地空間で有る(この事実は後述のHopf-Rinowの定理から従う))。
定義3.2.5(中点と分点)
距離空間 $(X,d)$ の点 $x,m,y\in X$ が $$d(x,y)=d(x,m)+d(m,y)$$ を満たすとき、$m$ を $x$ と $y$ の分点、更に $$d(x,m)=d(m,y)=\frac{1}{2}\cdot d(x,y)$$ を満たすとき、$m$ を $x$ と $y$ の中点という。
命題3.2.6(測地空間と中点)
測地空間の任意の二点には中点が存在する。逆に任意の二点に中点が存在する完備距離空間は測地空間である。
命題3.2.7(固有距離空間と測地空間)
固有距離空間の二点がLipschitz曲線で結べるなら、その二点を結ぶ長さ最小な曲線が存在する。 特に弧長距離空間である固有距離空間は測地空間でとなる。
補題3.2.8(測地線の連結)
$x,y,z\in X$ を $d(x,y)+d(y,z)=d(x,z)$ を満たすと距離空間 $(X,d)$ の点 とする 。$\gamma_0\colon [a,b]\to X$ が $x$ と $y$ を結ぶ、$\gamma_1\colon [b,c]\to X$ が $y$ と $z$ を結ぶ測地線のとき $\gamma\colon [a,c]\to X$ を $$\gamma(t)=\begin{cases}\gamma_0(t) & (t\in [a,b]) \\ \gamma_1(t) & (t\in [b,c]) \end{cases}$$ と定義すると、$\gamma$ は $x$ と $z$ を結ぶ測地線。
3.3. Hopf-Rinowの定理
Hopf-Rinowの定理はRiemann幾何学における最も基本的な定理の一つで有るが、その主張の微分構造を必要としない部分は距離空間においても完全に成立し、それ自体もHopf-Rinowの定理と呼ばれる。
定理3.3.1(Hopf-Rinowの定理Ⅰ)
完備かつ局所コンパクトな弧長距離空間は固有距離空間で有る。特に命題3.2.7から測地空間。
証明
$X$ を完備かつ局所コンパクトな弧長距離空間とする。$c\in X$ を任意に一つ固定し $R$ を $R:=\sup\{r>0 |\overline{B}(c,r)$ がコンパクト$\}$ と定義する。$R<\infty$ として矛盾を導く。
$X$ は局所コンパクトなので、$R>0$ となる。$\overline{B}(c,R)$ が点列コンパクトであることを示す。点列 $x_i\in\overline{B}(c,R)(i\in\mathbb{N})$ を任意に固定。このとき補題3.1.9より任意の $i,n\in\mathbb{N}$ にたいし $d(c,y_{n,i})<(1-2^{-n-1})\cdot d(c,x_i)$ かつ $d(y_{n,i},x_i)<(2^{-n-1}+2^{-i-1})\cdot d(c,x_i)$ となる点列 $y_{n,i}\in\overline{B}(c,R)(i,n\in\mathbb{N})$ を一つ固定。今 $d(c,y_{n,i})<(1-2^{-n-1})\cdot d(c,x_i)\le (1-2^{-n-1})R$ から $y_{n,i}\in \overline{B}(c,(1-2^{-n-1})R)$ がいえる。以下再帰的に $\iota_n\colon\mathbb{N}\to\mathbb{N}$ と $y_n$ を取る。
- step 0.
仮定から $\overline{B}(c,(1-2^{-1})R)$ は点列コンパクトなので $(y_{0,i})_{i\in\mathbb{N}}$ の収束部分列 $(y_{0,\iota_0(i)})_{i\in\mathbb{N}} $ を取りその収束先を $y_0$ とする。
- step n.
仮定から $\overline{B}(c,(1-2^{-n-1})R)$ は点列コンパクトなので $(y_{n,\iota_{n-1}(i)})_{i\in\mathbb{N}}$ の収束部分列 $(y_{n,\iota_n(i)})_{i\in\mathbb{N}}$ を取りその収束先を $y_n$ とする。
$\iota(i):=\iota_i(i)$ と $\iota\colon\mathbb{N}\to\mathbb{N}$ を定義すると、任意の $n\in\mathbb{N}$ にたいして $\displaystyle \lim_{i\to\infty}y_{n,\iota(i),n}=y_n$ となる。
$n\in\mathbb{N}$ を固定したとき $\displaystyle \lim_{i\to\infty}y_{n,\iota(i)}=y_n$ から十分大きい $i,j\in\mathbb{N}$ を取ると、$d(y_n,x_{\iota(i)})<d(y_{n,\iota(i)},x_{\iota(i)})+2^{-n}R<(2^{-n-1}+2^{-{\iota(i)}-1})\cdot d(c,x_{\iota(i)})+2^{-n}R\le 2^{-n}R+2^{-n}R\le 2^{1-n}R$ 、同様に $d(y_n,x_{\iota(j)})<2^{1-n}R$ となり $d(x_{\iota(i)},x_{\iota(j)})<2^{2-n}R$ がいえる。$n\in\mathbb{N}$ は任意だったので、$(x_{\iota(i)})_{i\in\mathbb{N}}$ はCauchy列であり、$X$ の完備性より収束する。よって $\overline{B}(c,R)$ は点列コンパクト。
$R$ が $\{r>0 |\overline{B}(c,r)$ がコンパクト$\}$ の最大値で有ることが示せたがそこから矛盾を導く。局所コンパクトから $$\overline{B}(c,R)\subseteq \bigcup\{B(x,r)| x\in\overline{B}(c,R), r>0{\small\ ,かつ\,}\overline{B}(x,2r){\small\,はコンパクト\,}\}$$ となる。$\overline{B}(c,R)$ はコンパクトなので、有限個の $(x_0,r_0),\cdots,(x_{n-1},r_{n-1})$ が存在して 各 $\overline{B}(x_i,2r_i)$ はコンパクトかつ、$\overline{B}(c,R)\subseteq \bigcup_{i=0}^{n-1}B(x_i,r_i)$ 。$\epsilon>0$ を $\epsilon:=\min\{r_0,\cdots,r_{n-1}\}$ と定義する。このとき補題3.1.10より $$\overline{B}(c,R+\frac{1}{2}\epsilon)\subseteq B(c,R+\epsilon)=B(B(c,R),\epsilon)\subseteq\overline{B}(\bigcup_{i=0}^{n-1}B(x_i,r_i),\epsilon)\subseteq\bigcup_{i=0}^{n-1}\overline{B}(B(x_i,r_i),\epsilon)\subseteq\bigcup_{i=0}^{n-1}\overline{B}(x_i,r_i+\epsilon)\subseteq\bigcup_{i=0}^{n-1}\overline{B}(x_i,2r_i)$$ となり $\overline{B}(c,R+\frac{1}{2}\epsilon)$ はコンパクト集合の閉部分集合なのでコンパクト。これは $R$ の最大性に矛盾。
この定理が距離空間におけるHopf-Rinowの定理であるが、これだけではRiemann多様体におけるHopf-Rinowの定理を即座に導けない。そこで多様体特有の話を加えれば、Riemann多様体におけるHopf-Rinowの定理を即座に導けるように改良を加えた改変を紹介する。
定義3.3.2
この記事では、距離空間 $X$ とその点 $p\in X$ について次の性質を「$\mathfrak{D}p=TpX$ 類似」と書くことにする((リーマン多様体 $M$ ではこの $\mathfrak{D}p=TpM$ 類似という条件は $\mathfrak{D}p=TpM$ より弱い条件で有る))。
- 任意の$x\in X$ と $p$ を結ぶ測地線が存在しかつ、$p$を始点とする任意の弧長で変数付けられた測地線は定義をその閉包まで拡張できる((定義域が $[s,t)$ のとき定義域を $[s,t]$ まで伸ばせるということ。))。
補題3.3.3
$(x_i)_{i\in\mathbb{N}}$ を距離空間 $X$ 上のCauchy列 $y$ を $X$ の点とするとき、$(d(y,x_i))_{i\in\mathbb{N}}$ は収束し、任意の $i\in\mathbb{N}$ について $\displaystyle |d(y,x_i)-\lim_{j\to\infty}d(y,x_j)|<\lim_{j\to\infty}d(x_i,x_j)$ が成り立つ。
定理3.3.4(Hopf-Rinowの定理Ⅱ)
局所コンパクトな弧長距離空間 $X$ とその点 $p\in X$ が $\mathfrak{D}p=TpX$ 類似 を満たすとする。このとき $X$ は固有距離空間で有る。特に命題3.2.7から測地空間。
証明
定理3.3.1から $X$ の完備性さえ示せば良い。$(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ をCauchy列とする。 $\displaystyle L:=\lim_{n\to\infty}d(p,x_n)$ としておく。 ことのとき $$\Gamma:=\{\gamma\colon [0,l]\to X|\gamma {\small\,は弧長で変数付けられた測地線、}0\le l\le L,\lim_{n\to\infty}d(\gamma(l),x_n)=L-l\}$$ は写像のグラフに関する包含関係(写像の拡張と制限)で帰納的順序集合である。実際、 $\Delta\subseteq \Gamma$ を全順序部分集合とすると(測地線という条件は有限的なので) $\tilde{\gamma}:=\bigcup\Delta$ は測地線となる。定義域は $0$ を始点する幅が $L$ で押さえられた閉区間の上昇列の合併なので有界閉区間又は有界半開区間である。半開区間ならば、$\tilde{\gamma}\colon [0,l)\to X$ とし、仮定から、$\gamma\colon [0,l]\to X$ を $\tilde{\gamma} $ の拡張とする、そうでなければ $\gamma\colon [0,l]\to X=\tilde{\gamma}$ とおく。さらに $\displaystyle \lim_{i\to\infty}l_i=l$ となる上昇列 $\gamma_i\colon [0,l_i]\to X\in\Delta$ をとる。補題3.3.3に注意すると $$|d(\gamma(l),x_n)-(L-l)|\le d(\gamma(l),\gamma_i(l_i))+|d(\gamma_i(l_i),x_n)-(L-l_i)|+l-l_i\le d(\gamma(l),\gamma_i(l_i))+\lim_{m\to\infty}d(x_n,x_m)+l-l_i $$ さらに右辺の$i$ を無限大に飛ばすと $$|d(\gamma(l),x_n)-(L-l)|\le \lim_{m\to\infty}d(x_n,x_m)$$ 以上より $\displaystyle \lim_{n\to\infty} d(\gamma(l),x_n)=L-l$ となり $\gamma\in\Gamma$。 よってZornの補題より $\Gamma$ は極大元を持つのでそれを改めて $\gamma\colon [0,l]\to X$ とおく。
仮に $l<L$ とする。このとき局所コンパクト性から $\epsilon>0$ を $\overline{B}(\gamma(l),\epsilon)$ がコンパクトになるように取る。補題3.1.9より $(m_n)_{n\in\mathbb{N}}$ を $\epsilon-2^{-n}<d(\gamma(l),m_n)<\epsilon$ かつ $d(\gamma(l),x_n)-\epsilon<d(m_n,x_n)<d(\gamma(l),x_n)-\epsilon+2^{-n}$ となるように取る。$\overline{B}(\gamma(l),\epsilon)$ のコンパクト性から、$(m_n)_{n\in\mathbb{N}}$ の収束部分列を $(m_{n_i})_{i\in\mathbb{N}}$ ととる。$\displaystyle m:=\lim_{i\to\infty}m_{n_i}$ としたとき、 $d(\gamma(l),m)=\epsilon$ かつ $\displaystyle\lim_{n\to\infty}d(m,x_n)=\lim_{n\to\infty} d(\gamma(l),x_n)-\epsilon$ となる。 $$\displaystyle\lim_{n\to\infty}d(p,x_n)\le d(p,m)+\lim_{n\to\infty}d(m,x_n)\le d(p,m)+L-l-\epsilon$$ と $d(p,m)\le d(p,\gamma(l))+d(\gamma(l),m)=l+\epsilon$ から $d(p,m)=l+\epsilon$ となり $d(p,m)=d(p,\gamma(l))+d(\gamma(l),m)$ が成り立つ。命題3.2.7から $\gamma(l)$ と $m$ を結ぶ測地線が存在。補題3.2.8から、$\gamma$ とその測地線を連結したものも測地線となる。これは $\gamma$ の極大性に矛盾。よって $l=L$ となり、$\displaystyle\lim_{n\to\infty}x_n=\gamma(l)$ が成り立つ。
関連項目
- 距離空間
- 前ページ:Lipschtz写像と関数空間
- 次ページ:距離空間の構成Ⅰ(積と貼り合わせ)
出典
- 1 Martin R. Bridson, André Haefliger. "Metric Spaces of Non-Positive Curvature". Springer (1990).