可換モノイド論

提供: Mathpedia

可換モノイドについての理論を展開することを主目的とする。

概説

モノイド・可換モノイド、または(可換)モノイド対象についての理論は、近年対数的代数幾何学やTöenの導来代数幾何学などの文脈において重要性を増している。

モノイドには単一の演算のみが備わっており、環などに比べるとあまり強い主張を示すことができないように一見思うかもしれないが、そのような直感には反して、可換環論の類似としてのモノイド論についても非常に豊かなものが広がっている。

可換モノイドとは?

可換モノイドとは、集合 $M$ と $M$ 上の二項演算 $+$ と $M$ の元 $0$ との組 $\langle M,+,0 \rangle$ であって、以下の条件

  • $a,b,c \in M$ について $(a+b)+c=a+(b+c)$
  • $a \in M$ について $a+0=0+a=a$
  • $a,b \in M$ について $a+b=b+a$

を充たすもののことをいう。アーベル群の公理から逆元の存在公理を除去した公理系のモデルと捉えることもできる。しかし群とは大きく異なる構造をしばしば持つ。

詳細は可換モノイド論/可換モノイドを参照されたい。

可換環と可換モノイド

可換モノイドがあらわれるシチュエーション

まあどれも知らないので自分は書けないんですけども。誰か助けてください。

$K$-理論

多様体もしくはスキーム $X$ について、$X$ 上のベクトル束の同型類には直和演算による可換モノイド構造が入るが、これは $X$ の性質を反映する基本的な量である。ただし $K$-理論の一般的な文脈においてはこのモノイドを群化する。

錐体・扇の理論

錐体とは、ユークリッド空間 $\mathbb{R}^n$ の部分集合であって、和・正数倍に閉じているもののことである。また定義の詳細はここでは述べないが、扇とは錐体の集まりであって特定の性質を充たすもののことをいう。錐体はそれ自身が $\mathbb{R}^n$ の部分モノイドであるが、錐体・扇の理論においてはさまざまな形で可換モノイドが現れる。

たとえば $\mathbb{R}$ の錐体の集合 $\{\{0\}, \mathbb{R}_{\geq 0}\}$ を $\mathbb{A}^1$-扇とよび、扇 $X$ から $\mathbb{A}^1$ への扇の射(これも詳細は述べないが、錐体を錐体へ移すようなユークリッド空間の線型写像)全体は可換モノイドとなっている。

トーリック多様体とは、大雑把に言えば、トーラス($(\mathbb{C}-\{0\})^n$)を稠密な部分多様体として持ちかつトーラスの作用を持つような代数多様体のことであるが、扇の理論はトーリック多様体の理論において非常に重要なものである。というより、扇の理論はトーリック多様体の理論と等価であることが知られている。これは扇の圏とトーリック多様体の圏のあいだの圏同値が存在するためである。圏同値のもとでたとえば $\mathbb{A}^1$-扇は射影直線 $\mathbb{A}_\mathbb{C}^1=\mathrm{Spec}(\mathbb{C}[X])$ と対応する。

対数的代数幾何学

数値的半群環

$\mathbb{N}$ の部分モノイドのことを数値的モノイドという。数値的モノイド $M$ について、モノイド環 $\mathbb{Z}[M]$ のことを数値的半群環とよぶ。このとき数値的半群環についての環論的性質と $M$ のモノイドとしての構造との関係については可換環論の文脈でしばしば調べられてきた。そのような環論的性質の例としてはGorenstein性などが有名である。

前提知識

できる限りself-containedとなるように努めるが、圏論の基本的な用語・知識については仮定することがある。基本的な代数の議論に慣れている方が望ましいが、これは必要ではない(不明点があればmathpediaに連絡されたい)。

語法上の注意

可換モノイド論/可換モノイドを除く子記事においては、特別な言及がない場合、可換モノイドについてこれを単にモノイドとよぶ。また、自然数には原則 $0$ を含める。

子記事一覧