Van Kampenの定理

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Van Kampenの定理

(Seifert-) Van Kampenの定理 ((ザイフェルト-)ファン カンペンの定理)とは、基本群をより小さな空間に分割して計算することができる強力な道具である。この定理によってかなり多くの位相空間の基本群が計算できる。この定理は証明の流れを理解することよりも使いこなせるようになることが大事であると言われることも多い。具体的な定理の使い方などは基本群、ホモトピー群の計算例を参照されたい。

定理の内容

$X$ を弧状連結位相空間、 $U,V\subset X$ を弧状連結な部分空間でさらに共通部分 $U\cap V$ は(空でなく)弧状連結であるとする。基点を $x\in U\cap V\subset X$ に取ると (弧状連結であるから群の同型類は基点の取り方にはよらない。)次の自然な同型対応がある。 $$\pi_1(X,x)\cong \pi_1(U,x){\ast}_{\pi_1(U\cap V,x)}\pi_1(V,x)$$ ただし右辺は融合積である。融合積は表示が与えられているときは簡単に表示を与えることができる(後述)。

圏論的視点

位相空間の圏において $X$ は $U,V$ への $U\cap V$ の包含写像による押し出しになっている。融合積も群の圏の押し出しであった。したがって基本群をとる $\pi_1$ 関手 は(上の条件の元で)押し出しを保つ関手になっている。 (図式は技術的問題でまだ書けないのでちょっと待っててね)

群の表示が与えられていた場合

包含写像によって誘導される基本群の間の準同型を $I:\pi_1(U\cap V,x)\to \pi_1(U,x) ,J:\pi_1(U\cap V,x)\to \pi_1(V,x)$としてそれぞれの群の表示が

  • $\pi_1(U,x)\cong\langle a_1,\cdots a_n\mid \alpha_1,\cdots \alpha_{n'}\rangle$
  • $\pi_1(V,x)\cong\langle b_1,\cdots b_m\mid \beta_1,\cdots \beta_{m'}\rangle$
  • $\pi_1(U\cap V,x)\cong\langle c_1,\cdots c_l\mid \gamma_1,\cdots \gamma_{l'}\rangle$

と与えられているとき $$\pi_1(X,x)\cong \pi_1(U,x){\ast}_{\pi_1(U\cap V,x)}\pi_1(V,x)\cong \langle a_1,\cdots a_n,b_1,\cdots b_m\mid\alpha_1,\cdots \alpha_{n'}, \beta_1,\cdots \beta_{m'}, I(\gamma_1)(J(\gamma_1))^{-1},\cdots I(\gamma_{l'})(J(\gamma_{l'})^{-1})\rangle$$ また、非標準的な表示を用いれば $$\pi_1(X,x)\cong \pi_1(U,x){\ast}_{\pi_1(U\cap V,x)}\pi_1(V,x)\cong \langle a_1,\cdots a_n,b_1,\cdots b_m\mid\alpha_1,\cdots \alpha_{n'}, \beta_1,\cdots \beta_{m'}, I(\gamma_1)=J(\gamma_1),\cdots I(\gamma_{l'})=J(\gamma_{l'})\rangle$$ とも表すことができる。後半の追加された関係式は「 $U\cap V$ 内の同じループは $X$ 内でも同じループである」ということに他ならず、押し出しが「指定されたのりしろでの張り合わせ」であると解釈すればこの表示は直感的にも納得いくものではないだろうか。詳しくは融合積も参照されたい。

計算例

具体的な定理の使い方などは基本群、ホモトピー群の計算例を参照されたい。

定理から従う重要な系

  • $\pi_1$ 関手のウェッジ和に関する準同型性はこの定理の特殊な場合である。自明群による押し出しは自由積に他ならない。これは表示が与えられている場合を見れば明らかであろう
  • 結び目の図式からWirtinger表示を得るアルゴリズムは"over arc"と"under arc"を分離する(穴あき)球面を取り、その球面により分離される二つの領域の閉包を $U,V$ と置きこの定理を適用することで直ちに表示を得る。とくにこの場合 $U,V,U\cap V$ の基本群が全て自由群であることから非常にシンプルな結果となる。またこの定理を用いずに直感的な理解をすることもできる。

参考文献

関連項目