群論の基礎2.5:様々な群
この章では群の具体例を確認する。 群であることや部分群であることについては証明しない。
定義 2.5. (対称群)
集合$X_n=\{1,\cdots,n\}$から$X_n$自身への全単射をn次の置換という。
$n$次の置換全体の集合$S_n$は写像の合成を積として群になる。
$S_n$を$n$次対称群という。
$n$次対称群は位数$n!$の有限群である。
定義 2.5. (一般線型群)
実数を成分に持つ$n$次正則行列全体の集合を$GL(n,\mathbb{R})$と書く。
これは行列の積によって群になる。
複素数を成分に持つ$n$次正則行列についても同様で、$GL(n,\mathbb{R}),GL(n,\mathbb{C})$を$n$次の一般線型群という。
注意 2.5. (実数・複素数以外の体について)
体について既に知っている読者に向けて説明すると、一般線型群は実数や複素数だけでなく一般の体で定義される。
これ以降に出てくる行列によって定義される群も同様である。
定義 2.5. (特殊線型群)
\[ SL(n,\mathbb{R})=\{A\in GL(n,\mathbb{R})|\det A=1\} \]
と定義すると、これは行列の積によって群になる。
複素数についても同様で、$SL(n,\mathbb{R}),SL(n,\mathbb{C})$を$n$次の特殊線型群という。
特殊線型群は一般線型群の部分群である。
定義 2.5. (直交群)
\[ O(n)=\{A\in GL(n,\mathbb{R})|A ^tA=E\} \]
と定義すると、これは行列の積によって群になる。
$O(n)$を直交群という。
直交群は一般線型群の部分群である。
定義 2.5. (特殊直交群(回転群))
\[ SO(n)=\{A\in O(n)|\det A=1\} \]
と定義すると、これは行列の積によって群になる。
$SO(n)$を特殊直交群、あるいは回転群という。
特殊直交群は直交群の(正規)部分群である。
定義 2.5. (ユニタリ群)
\[ U(n)=\{A\in GL(n,\mathbb{C})|A ^t\overline{A}=E\} \]
と定義すると、これは行列の積によって群になる。
$U(n)$を$n$次のユニタリ群という。
ユニタリ群は一般線型群の部分群である。
定義 2.5. (特殊ユニタリ群)
\[ SU(n)=\{A\in U(n)|\det A=1\} \]
と定義すると、これは行列の積によって群になる。
$SU(n)$を$n$次の特殊ユニタリ群という。
特殊ユニタリ群はユニタリ群の部分群である。
定義 2.5. (四元数群)
\[ Q_8=\{\pm1,\pm i,\pm j,\pm k\} \]
と定義する。
\[ ij=k,\ jk=i,\ ki=j \] \[ i^2=j^2=k^2=-1 \]
によって演算を定めると、$Q_8$は位数8の非可換群になる。
$Q_8$を四元数群という。
定義 2.5. (二面体群)
$3\leq n\in\mathbb{N}$とする。
$P_n$を単位円に接する正$n$角形で、1つの頂点を$(1,0)$に持つものとする。
\[ D_n=\{A\in O(2)| AP_n=P_n\} \]
と定義すると、これは行列の積によって群になる。
$D_n$を二面体群という。