コンパクト化
コンパクト化
コンパクト化とは、位相空間を「コンパクト」にする操作のひとつである。
定義
位相空間 $X$ に対して、コンパクトHausdorff位相空間 $Y$ と連続写像 $c:X\to Y$ の組 $(Y,c)$ が $X$ のコンパクト化であるとは、以下の性質が成り立つことをいう。
- $X \to f(X)$ は同相
- $\overline{f(X)}=Y$
ただし、$c$ が明らかな場合は $Y$ のみについてこれを $X$ のコンパクト化であるという。
例
実数空間(1)
実数空間 $\mathbb{R}$ のコンパクト化の例として、$S^1$ が挙げられる。
実際、$\mathbb{R}$ と $S^1-\{0\}$ とのあいだの同相 $c'$ を適当に固定したとき、$c'$ の延長 $c:\mathbb{R}\to S^1$ によって $S^1$ は $\mathbb{R}$ のコンパクト化となる。特に、Alexandroffの一点コンパクト化となっている。
実数空間(2)
実数空間 $\mathbb{R}$ のコンパクト化の例として、$[0,1]$ が挙げられる。
実際、$\mathbb{R}$ と $(0,1)$ とのあいだの同相 $c'$ を適当に固定したとき、$c'$ の延長 $c:\mathbb{R}\to [0,1]$ によって $[0,1]$ は $\mathbb{R}$ のコンパクト化となる。
離散空間のStone-Čechコンパクト化
離散空間 $X$ について、環 $\mathbb{F}_2^X$ を $\mathcal{P}(X)$ と表記すると、$\mathrm{Spec}(\mathcal{P}(X))$ は $X$ のStone-Čechコンパクト化 $\beta X$ と自然に同相となる。
構成
Alexandroffの一点コンパクト化
局所コンパクト空間 $X$ について、以下に構成される位相空間 $\alpha X$ は $X$ のコンパクト化である。$\omega X$ を $X$ の一点コンパクト化という。
- $\alpha X$ の台集合を $X\cup\{pt\}$ と定める。
- $\alpha X$ の部分集合 $U$ が、「$pt$ を含むならば、ある $X$ のコンパクト集合 $K$ について $U=\{pt\}\cup X-K$ と表せ、そうでないならば $X$ の開集合である」とき、開集合であるように位相を定める。
Stone-Čechのコンパクト化
Stone-Čechコンパクト化は、「最大のコンパクト化」として知られるコンパクト化である。
Tychonoff空間 $X$ について、$X$ から $[0,1]$ への連続写像全体の集合を $M$ とおく。このとき、$X$ の点 $x$ について、以下のようにして定まる $[0,1]^M$ の点を $t_x$ と定める。
- $f\in M$ について、$t_x$ の $f$ 成分は $f(x)$ である
このとき、$x$ に対し $t_x$ をあてる写像 $t:X\to [0,1]^M$ について、$t$ の像の閉包を $\beta X$ とおくと、$t$ の制限 $t':X\to \beta X$ により $\beta X$ は $X$ のコンパクト化となっている。
このとき $\beta X$ を $X$ のStone-Čechコンパクト化という。
ここで、Stone-Čechコンパクト化の顕著な性質として、コンパクトHausdorff空間 $Y$ に対して自然な同型 $\mathrm{Hom}(X,Y)\cong \mathrm{Hom}(\beta X,Y)$ が成り立つことが挙げられる。逆にこの性質により $\beta X$ を特徴付けることも可能である。
事実
- コンパクト化が存在することは、Tychonoff空間であることと同値である。
- Tychonoff空間 $X$ と任意のコンパクト化 $cX$ について、$X$ の点を保つようなStone-Čechコンパクト化 $\beta X$ からの連続全射 $\beta X\to cX$ がただひとつ存在する。