Whiteheadの問題

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Whiteheadの問題(ホワイトヘッドのもんだい、Whitehead problem) とは、アーベル群に関する主張であり、具体的には次のようなものである。

  • アーベル群 $A$ について $\mathrm{Ext}^1(A, \mathbb{Z}) = 0$ ならば $A$ は自由アーベル群であるか ?

この主張の真偽は ZFC 上独立であることが知られている。

概要

この主張が ZFC 上独立であることは、Shelah によって示された。

実際に、以下のことが示されている。

  • 公理 $\mathbf{V} = \mathbf{L}$ のもとでは主張は真である。
  • 公理 $\mathrm{MA} + \lnot \mathrm{CH}$ のもとでは主張は偽である。

解説

代数学に関する基本的な知識については仮定している。

$\mathrm{Ext}$ 群

詳細はホモロジー代数の教科書等にゆずるとして、ここでは必要な範囲においての説明をおこなう。

まず $\mathrm{Ext}$ 群の定義について解説する。自然数 $i \in \mathbb{N}_0$, アーベル群 $A$, $B$ が与えられたときに、次の方法によりアーベル群 $\mathrm{Ext}^i(A, B)$ を得ることができる。

  • 完全列 $\ldots \to P_2 \to P_1 \to P_0 \to A \to 0$ であって、$P_\bullet$ がすべて射影アーベル群であるようなものをとる。このとき、$\ldots \to \mathrm{Hom}(P_2, B) \to \mathrm{Hom}(P_1, B) \to \mathrm{Hom}(P_0, B) \to 0$ の $i$-次ホモロジー群について、これを $\mathrm{Ext}^i(A, B)$ とよぶ。

この構成は完全列 $P_\bullet \to A \to 0$ の取り方に依存しているが、しかしながら異なる完全列によって構成された $\mathrm{Ext}$ 群のあいだには、標準的な同型が存在することが知られている。

また、$\mathrm{Ext}^1$ については、次のような具体的な対象と対応することが知られている。

  • アーベル群 $A$, $B$ について、$0 \to B \to X \to A \to 0$ なるアーベル群の短完全系列の同型類全体の集合を $\mathrm{Ext}(A, B)$ とよぶと、自然な集合の同型 $\mathrm{Ext}(A, B) \cong \mathrm{Ext}^1(A, B)$ が存在する。

実際、アーベル群 $A$ に対して、$\mathbb{Z}[A^3] \to \mathbb{Z}[A^2] \to \mathbb{Z}[A] \to A \to 0$ なる完全列をとることができる。ただし、それぞれの射について、$(a, b, c) \in A^3$ に対応する単位ベクトル $[(a, b, c)]$ について、$[(a, b)] + [(a + b, c)] - [(b, c)] - [(a, b + c)]$ を充てる射として $\mathbb{Z}[A^3] \to \mathbb{Z}[A^2]$ をとり、また $(a, b) \in A^2$ に対応する単位ベクトル $[(a, b)]$ について $[a] + [b] - [a + b]$ を充てる射として $\mathbb{Z}[A^2] \to \mathbb{Z}[A]$ をとり、$[a]$ について $a$ を充てる射として $\mathbb{Z}[A] \to A$ をとる。このとき図式は完全となる。

ここで、集合の射 $c \colon A^2 \to B$ であって、$c(a, b) + c(a+ b, c) - c(a, b + c) - c(b, c) = 0$ をみたすものを $1$-コサイクル、ある $d \colon A \to B$ なる集合の射により $c(a, b) = d(a) + d(b) - d(a + b)$ と表せるものを $1$-コバウンダリという。それぞれ全体のなすアーベル群を $Z^1(A, B)$, $B^1(A, B)$ という。

このとき、$\mathrm{Ext}^1(A, B)$ は、自然に $Z^1(A, B)/B^1(A, B)$ と同一視される。

ここで、$0 \to B \to X \to A \to 0$ なる短完全系列が与えられたとき、$s \colon A \to X$ なる集合のセクションをとる。このとき、$c(a, b) := s(a) + s(b) - s(a + b)$ とおけば、これは $1$-コサイクルとなる。このコサイクルは、modulo $B^1(A, B)$ のもとでは、セクション $s$ のとり方によらないため、$\mathrm{Ext}^1(A, B)$ の元が定まる。これは、$\mathrm{Ext}$ と $\mathrm{Ext}^1$ との標準的な同型を定める。

集合論的公理

Whiteheadの問題に関連して登場する集合論的公理について解説する。ここで、順序数や基数などに関する基本的な知識については前提とする。

構成可能宇宙

Martin の公理

$\mathbf{V} = \mathbf{L}$ からの肯定

$\mathrm{MA} + \lnot \mathrm{CH}$ からの否定