Noether加群

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環 $R$ について、左 $R$-加群 $M$ がNoether加群 (Noetherian module) であるとは、

(i) $M$ の任意の部分加群が有限生成である

ことをいう。とくに $M=R$ のとき、$R$ がNoether加群であることは $R$ がNoether環であることと同値である。

同値な定義

定理 1

(i) および次の各条件は同値である。

(ii) $M$ の部分加群の上昇列

$$M_1\subset M_2\subset \cdots$$ をとると、$i, j$ が十分大きいとき、必ず $M_i=M_j$ となる。

(iii) $S\neq\emptyset$ が $M$ の部分加群からなる集合とすると、$S$ は必ず包含関係に関する極大元をもつ。つまり、$N\in S$ だが、$N\subset L\in S$ のとき $L=N$ となる $M$ の部分加群 $N$ が存在する。
Proof.

(i)$\Longrightarrow$(ii). $$N=\bigcup_{i=1}^\infty M_i$$

とおくと、$N$ も $M$ の部分加群となる。実際、$a, b\in N$ ならば $a\in M_i, b\in M_j$ となる $i, j$ をとると、 $k=\max\{i, j\}$ について $a+b\in M_k\in N$ となるし、$a\in N, r\in R$ のとき、 $a\in M_i$ となる $i$ をとると、$ra\in M_i\in N$ となる。 したがって、$N$ は有限生成であるから、$N$ の生成元 $a_1, a_2, \ldots, a_r$ がとれる。 $a_j\in M_i$ となる最小の $i$ を $f(j)$ とし、$i_0=\max f(j)$ とおくと、$i\geq i_0$ のとき、 $a_1, a_2, \ldots, a_r\in M_i$ なので、$M_i=N$ となる。つまり $i, j\geq i_0$ のとき $M_i=M_j=N$ となる。

(ii)$\Longrightarrow$(iii).

(iii) に反し $S\neq\emptyset$ が $M$ の部分加群からなる集合だが包含関係に関する極大元をもたないと仮定し、$M_1\in S$ をひとつとる。 $M_1$ は極大元ではないから、$$M_1\subset M_2\in S, M_2\neq M_1$$ となる $M_2$ がとれる。 一般に $$M_1\subset M_2\subset \cdots \subset M_n\in S, M_1\neq M_2\neq \cdots \neq M_n$$ となる $M_1, \ldots, M_n$ がとれたとすると、 $M_n$ は極大元ではないから、 $$M_n\subset M_{n+1}\in S, M_{n+1}\neq M_n$$ となる $M_{n+1}$ がとれる。 このようにして、$M$ の部分加群の無限上昇列 $$M_1\subset M_2\subset \cdots, M_1\neq M_2\neq \cdots$$ がとれるが、これは (ii) に反する。

(iii)$\Longrightarrow$(i).

(i) に反し $M$ の部分加群 $N$ が有限生成でないとし、$a_1\in N$ をひとつとる。$N$ が $a_1$ で生成されないとき、$M_1=(a_1)$ に属さない $a_2\in N$ がとれる。 同様にして $M_n=(a_1, a_2, \ldots, a_n)$ が $N$ の部分加群ならば、$M_n$ に属さない $a_{n+1}\in N$ がとれる。 このようにして部分加群の無限列 $M_n\ (n=1, 2, \ldots)$ がとれる。 $S=\{M_n: n=1, 2, \ldots\}$ とおく。$M_n\subset M_{n+1}$ だが $M_n\neq M_{n+1}$ なので $S$ は極大元をもたない。これは (iii) に反する。

参考文献