零点の位数
以下 $X$ はリーマン面であるとする。
定義 1 (零点の位数)
定値写像でない有理型関数 $f \colon X \to \mathbb{P}^1$ と $x \in X$ について、$f(x) = 0$ ならば、$f$ の $x$ での零点の位数とは、$x$ の任意の座標近傍 $U(z)$ において $f$ を冪級数表示したとき、それが $a_n \neq 0$ なるように $a_nz^n + a_{n+1}z^{n+1} + \ldots $ と表示できたならば、この $n$ のことをいう。これは座標近傍の取り方に依らない。
定義 2 (極の位数)
定値写像でない有理型関数 $f \colon X \to \mathbb{P}^1$ と $x \in X$ について、$f(x) = \infty$ ならば、$f$ の極の位数とは、$x$ の任意の座標近傍 $U(z)$ において $f$ をローラン展開したときの最低の次数を $-n$ としたときの $n$ のことをいう。これは座標近傍の取り方に依らない。
零点・曲の位数の概念を自然に拡張したものが、次に導入される分岐指数の概念である。
補題 3 (分岐指数)
正則関数 $f \colon X \to Y$ について、$f(x) = y$ であるとする。このとき、$x$ のまわりの局所座標 $z$, $y$ のまわりの局所座標 $w$ について、$f$ を座標表示したときの $z$ についての最低の次数を $x$ についての $f$ の分岐指数といい、$e_x(f)$ と表記する。
さきの状況において、このとき陰関数定理により、適切な局所座標を選ぶと、$f$ は $z^{e_x(f)}$ と表示できる。
$e_x(f)$ が $1$ であるとき、$f$ は $x$ で不分岐であるといい、そうでないときに $x$ で分岐するという。
以下は定義 (とあるいは基本的な複素関数論) より明らか。
- 非零な正則関数について、その零点は離散的である。
- 定値でない有理型関数について、その極は離散的である。
- 分岐点全体は離散的である。
正則写像 $f \colon X \to \mathbb{P}^1$ について、$x \in X$ が零点ならば $\mathrm{ord}_x(f) = e_x(f)$, $x$ が極ならば $\mathrm{ord}_x(f) = -e_x(f)$, そうでないならば $\mathrm{ord}_x(f) = 0$ と定める。このとき、$\mathrm{ord}_x$ は $X$ 上の有理型関数のなす体 $\mathfrak{M}(X)$ 上の付値を構成する。