接続の微分幾何

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接続の微分幾何

接続の微分幾何(せつぞくのびぶんきか、connection)とは、可微分多様体の接続(共変微分)の性質を総合的に論じる分野である。

主バンドル

主バンドルのエーレスマン接続

ベクトルバンドル

1.ベクトルバンドルの定義

ベクトルバンドル(vector bundle)とは,(集合としては)可微分多様体$M$によってパラメータ付けされた次元が一定ベクトル空間の族の和である.

特に可微分多様体の各点における接空間$T_pM$をすべて集めた$TM:=\bigcup_{p \in M}T_pM$は接バンドル(tangent bundle)と呼ばれる.Euclid空間に埋め込まれた$m$次元多様体$M$の接空間(例えば3次元Eucld空間内の球面の接平面)を考えればわかるように,接空間$T_pM$は各点$p$上でばらばらに存在するのではなく,点$p$の動きに応じて滑らかに動く. いいかえれば$M$のつながり方に合わせて, 接バンドル$TM$も滑らかにつながっているのである. つまり接束$TM$を座標近傍$U$上に"制限"した$TM|_U:= \bigcup_{p \in U}T_pM$は, $U \times \mathbb{R}^m$と同一視できると考えられる..

上記の例から得られる構造を加味して,改めてベクトルバンドル$E$を表現すれば,可微分多様体$M$によって"滑らかに"パラメータ付されたベクトル空間の族の和$E=\bigcup_{p \in M}E_p$($E_p$は次元一定のベクトル空間)であり,局所的には$M$の近傍$U$とベクトル空間$\mathbb{R}^r$の直積と"同型"である($E|_U:= \bigcup_{p \in U}E_p \cong U \times \mathbb{R}^r $)ような空間と言える. ("同型"は単に微分同相ではないことに注意. というのも任意の多様体は定義から円盤と微分同相であり,$\mathbb{D}^m \cong \mathbb{D}^{m-r} \times \mathbb{R}^{r}$が成立する.)

上記をフォーマルに書き下すと以下の定義が得られる.

定義1.1(ベクトルバンドル)

$M$, $E$ を可微分多様体.$\pi :E \to M$を可微分写像とする.(また$r$を自然数とする.) このとき$(E, \pi ,M)$(あるいは$\pi$,あるいは簡単に$E$)がランク$r$のベクトルバンドルとは,$E, \pi ,M$が次の1~3を満たすことを言う.

  1. $\pi$が全射である.
  2. $M$上の任意の点$p\in M$対して, $\pi^{-1}(p)$が$r$次元ベクトル空間の構造を持つ.
  3. $M$上の任意の点$p\in M$対して, $p$の開近傍$U\subset M$と微分同相写像$\phi_U: \pi^{-1}(U) \cong U \times \mathbb{R}^r$が存在し, 次の(3-1), (3-2)を満たす. (3-i) $\pi=\rm{proj}_1 \circ \phi_U$. (3-ii) $U$上の任意の点$q\in U$に対して, $\phi_U: \pi^{-1}(q) \cong \{q\} \times \mathbb{R}^r$が線型同型である.

$(E, \pi ,M)$がランク$r$のベクトルバンドルある時, $E$を全空間(total space), $\pi$を射影(projection), $M$を底空間(base space)という.

特に底空間$M$が一点集合の場合は, $E$はベクトル空間に他ならない. この意味でベクトルバンドルは, ベクトル空間の一般化となっていることが分かる.

更にベクトルバンドルは多様体とベクトル空間の直積の一般化になっている.

具体例1.2(直積ベクトルバンドル)

$M$を可微分多様体とする. このとき, $(M \times \mathbb{R}^r,\rm{proj}_1,M)$はベクトルバンドルである. $U=M$は$\phi_U=\rm{id}$が定義を満たすことを確認すればよい.

具体例1.3(接バンドル, 余接バンドル)

$M$を可微分多様体とする. このとき, 接バンドル$TM:= \bigcup_{p \in M}T_pM$, 余接バンドル$T^*M:= \bigcup_{p \in U}T^*_pM$はベクトルバンドルとなる. (接バンドル$TM$, 余接バンドル$T^*M$の位相構造及び可微分構造については, より一般的な形で後述する,)

ベクトルバンドルの接続

接バンドルの接続