アーベル圏1:加法圏
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定義 1. (零射を持つ圏)
$\cC$を圏とする。
$\cC$が以下を満たすとき, $\cC$には零射が与えられていると言う。
(1)任意の対象$X,Y\in\cC$に対して, 零射と呼ばれる射$0_{X,Y}\in\cC(X,Y)$が存在する
(2)零射は任意の$X.Y,Z\in\cC$に対して以下を満たす
(a)任意の$f\in\cC(X,Y)$に対して$0_{Y,Z}\circ f=0_{X,Z}$
(b)任意の$g\in\cC(Y,Z)$に対して$g\circ 0_{X,Y}=0_{X,Z}$
命題 1. (恒等射が零射$\LR$零対象)
$\cC$を零射を持つ圏とする。
ある$C\in\cC$に対して以下は同値。
(1)$id_C=0$
(2)$C$は始対象
(3)$C$は終対象
(4)$C$は零対象
Proof.
$(1)\Ra(2)$
任意の$X\in\cC$に対して$\cC(C,X)=\set{0}$を示す。
任意に$f\in\cC(C,X)$を取る。
\[ f=f\circ id_C=f\circ 0=0 \]
よって、$C$は始対象。
$(2)\La(1)$
$\cC(C,C)=\set{0}$より明らか。
$(1)\LR(3)$も双対的に示される。$(4)$は$(2)$かつ$(3)$なので$(1)\LR(4)$
□命題 1. (零対象は零射を定める)
圏$\cC$が零対象を持つとする。
任意の$X,Y\in\cC$に対して零射$X\ra Y$を零対象を経由する射として定義する。
この方法で$\cC$に零射を与える事ができる。
命題 1. (零対象をうつす関手$\LR$零射をうつす関手)
$\cC,\cD$を零対象を持つ圏とする。以下が成り立つ。
関手$F:\cC\ra\cD$は零対象を零対象にうつす$\LR$関手$F:\cC\ra\cD$は零射を零射にうつす。
命題 1. ()
圏$\cC$に零射が与えられているとする。対象$X_1,X_2\in\cC$に対して以下が成り立つ。
積$(X_1\times X_2,p_1,p_2)$および余積$(X_1\coprod X_2,\iota_1,\iota_2)$が存在するとき、以下を満たす射$\eta\in\cC(X_1\coprod X_2,X_1\times X_2)$が一意に存在する。
\[ p_1\circ\eta\circ\iota_1=id_{X_1},\ p_2\circ\eta\circ\iota_1=0 \] \[ p_1\circ\eta\circ\iota_2=0,\ p_2\circ\eta\circ\iota_2=id_{X_2} \]
Proof.
定義 1. (直和)
$\cC$に零射が与えられているとする。
$X_1,X_2\in\cC$に対して、積$(X_1\times X_2,p_1,p_2)$および余積$(X_1\coprod X_2,\iota_1,\iota_2)$が存在し、上記命題で得られた$\eta:X_1\coprod X_2\ra X_1\times X_2$が同型となるとき、$X_1$と$X_2$の直和が存在するという。 このとき、$X_1,X_2$の(余)積を$X_1\oplus X_2$で表し$X_1$と$X_2$の直和という。
定義 1. (前加法圏)
圏$\cC$が以下を満たすとき、$\cC$を前加法圏(プレ加法圏)という。
(1)任意の$X,Y\in\cC$に対して、$\cC(X,Y)$がアーベル群となる。
(2)任意の$X,Y,Z$に対して、射の合成写像
\[ -\circ-:\cC(Y,Z)\times\cC(X,Y)\ra\cC(X,Z) \]
は双線形写像となる。
命題 1. (前加法圏における単射/全射性と同値な条件)
$\cC$を前加法圏とする。 以下が成り立つ。
(1)射$f:X\ra Y$が単射$\LR$
任意の$w\in\cC(W,X)$に対して、
\[ f\circ w=0\Ra w=0 \]
(1)射$f:X\ra Y$が全射$\LR$
任意の$z\in\cC(Y,Z)$に対して、
\[ z\circ f=0\Ra z=0 \]
Proof.
命題 1. ()
$\cC$を前加法圏とする。以下が成り立つ。
$X_1,X_2\in\cC$の積が存在する$\LR$$X_1,X_2\in\cC$の余積が存在する。
また、これらは存在すれば同型となるので実際には直和となる。
Proof.
定義 1. (直和因子)
$\cC$を前加法圏とする。
$X,X^\p\in\cC$に対して、ある$Y\in\cC$が存在して$X\cong X^\p\bigoplus Y$が成り立つとき、$X^\p$を$X$の直和因子という。
定義 1. (加法圏)
圏$\cC$が以下を満たすとき、$\cC$を加法圏とよぶ。
(1)$\cC$は前加法圏である。
(2)$\cC$には零対象$0\in\cC$が存在する。
(3)任意の$X,Y\in\cC$に対して、直和$X\bigoplus Y$が存在する。
命題 1. (加法圏は任意の有限直和を持つ)
$\cC$を加法圏とする。
任意の$X_1,\cdots X_n(n\in\mN)$に対して、直和$X_1\bigoplus\cdots\bigoplus X_n$が存在する。
零対象が0個の直和とみなせることと合わせて、この性質は任意の有限直和を持つと呼ばれる。
定義 1. (加法関手)
$\cC,\cD$を前加法圏とする。
関手$F:\cC\ra\cD$が加法的な関手であるとは、任意の$X,Y\in\cC$に対して
\[ F:\cC(X,Y)\ra\cD(FX,FY) \]
がアーベル群の準同型となることを言う。
命題 1. (加法関手は直和を保つ)
$\cC,\cD$を加法圏、$F:\cC\ra\cD$を加法関手とする。以下は同値。
(1)$F$は加法関手
(2)$F$は有限積を保つ
(3)$F$は有限余積を保つ
(4)$F$は複積を保つ
命題 1. ()
命題 1. ()
命題 1. ()
Proof.
Proof.
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Proof.
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Proof.
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Proof.
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